「魚ちゃんのエサ」冷たい熱帯魚 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
魚ちゃんのエサ
園子温「家賃3部作」の一作目。
ようやく観ることができました。
実際に起きた事件を基に作られた物語。
熱帯魚店を営む社本は、ある日自分の連れ子の娘が万引きしたことをきっかけに、村田という男に出会う。
村田は自分よりも大きな熱帯魚店を経営しており、人柄も良く何かと世話になるようになるが、村田の本当の顔が明らかになっていき…
娘や嫁を弱みというか人質に取られ、殺人の手伝いをせざるを得ない状況に追い込む、村田の巧みな話術。
普段はニコニコしているけれど、殺しの時は人が変わったように感情をなくす。
「でんでんさんが恐ろしい」と聞いていましたが、噂通りの怪演でした。
そして村田に洗脳され、最後には自分も狂い壊れていく社本も、吹越さんにしか演じられなかったと思います。
黒沢あすかさんのドスの効いた声と芝居も迫力があって素晴らしかった。
グロ描写もしっかりあって、単にグロいというよりは、園子温映画らしい生活感のある汚さや血生臭さが際立っていたように思います。
耐性ついてきた私はいけましたが、やはり苦手な人は要注意かも。
基となった埼玉愛犬家連続殺人事件について、少し調べてみましたが、これはまた映画以上にとんでもない事件ですね。
概要を見る感じだいぶ実際の事件に寄せてきていて、『愛のむきだし』に比べるとかなり忠実。
直接、埼玉愛犬家連続殺人事件の映画化といっても支障がないほど、そのまんま。
ペットショップから熱帯魚店への改編も良かったと思う。
wikiによると主犯のSは、
「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなしだ。殺しのオリンピックは本物のオリンピックよりずっと面白い」とか、
「死体がなければただの行方不明だ。証拠があるなら出してみろ。俺に勝てる奴はどこにもいない」とか、
「最初は俺も怖かったが、要は慣れ。何でもそうだが、一番大事なのは経験を積むこと」とか、
「臭いの元は肉だ。そこで透明にする前に骨と肉をバラバラに切り離すことを思いついた」などなどサイコパス発言の数々に震え上がる。
しかもSは獄中で病死。胸糞悪ぃぃぃ
(映画のラストは『地獄でなぜ悪い』的な投げやり感〔それが園子温映画の魅力の一つですが〕があるので、正直胸糞悪くはならなかったけれど)。
人生は痛いんだよ!
ある意味パラサイト。
このとんでもない世界観の中でも家族や人生のテーマはしっかり生きていて、普通の人ゆえの豹変や裏切り、家族の崩壊などエログロだけではない秀作でした。