蛇のひとのレビュー・感想・評価
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わかりやすさ
以前一度見たかもしれない。
2010年の作品
解説にあったニューマンサスペンスという言葉がとてもあっているように思う。
映画を通して言いたいことをわかりやすく表現している。
この物語が提示している様々な問題に対する答えとはいったい何だったのだろうか?
この作品の秀逸なのが事件であって事件ではなく、警察が絡む内容は限られている点だろう。
それ故主人公神戸ヨウコは、会社命令で今西ユキオを探すことになるが、実際彼女が探していたのは自分の本心だったように思った。
他人の中に見る邪悪なもの。
「じゃ」という発音と「蛇」
普段は何気なく誠実そうに生きているが、時折顔をのぞかせる蛇のような邪心
生い立ちや環境、人々の中に潜む邪悪さに対する抵抗
弟子の中で飛びぬけて上手かった義太夫の語り 逆恨み 嫉妬
一番弟子の初舞台で、一番弟子と入れ替わってしまうという大胆不敵な所業
その後に起きた彼の絶望と犯した大事件
幸ちゃんは「大方予想していた」と言っていたが、それは違うように感じた。
人を口車に乗せ、生かして、殺す。
いかにもサスペンスチックな思考 賢さとサイコ
神戸は自分の中にもある邪悪な心を認めたことで、今西本人そのものが邪悪な存在ではないと思った。
婚約者の存在
今西が推理した通り、彼女の本心は「彼」ではないと思っているが、年齢や現状を鑑みればそこが落としどころであるのは間違いない事実だ。
彼女の「事務的で愛想のない会話」」は、自分の本心を隠している証拠。
それを今西に疾うに見透かされていた。
それをダメ押しされた時、神戸は初めて本心を口に出してみた。
「私が見張ってます。ずっと」
本心を口に出してみれば、その結果が期待通りにならなくても、どこか気分がすっきりするのだろう。
会社の帰り道、同僚の田中とカフェ飯を食べて、口笛を吹きながら歩く自分の姿を、神戸自身が俯瞰していたように感じた。
本当の自分自身を見つめてみる。
しかし、
いくら口笛を吹ても、頭も気分もすっきりしている神戸には、どうしたって邪心は生まれてこない。
婚約者との結婚も、気分をリセットできたことで新鮮な気持ちでできるかもしれない。
会社で起きた部長の自殺と1億円の横領
直属の部下だった神戸が辿った今西という人物の足跡
彼女が知る今西と他の人が語る今西の人物像が大きく違ったこと。
今西とは、計画的に人を口車に乗せて、人を不幸にする人物なのか?
このミステリー
保険屋の女性の話から前の会社の同僚、そして予備校時代から実家、幼少期の出来事まで。
さて、
今西ユキオ
彼は会社が自分を探すことを「計算」した。
その役が神戸となることも知っていた。
神戸を見張るように田中が指示されることも計算していたと考えるべきだろう。
それがあって初めてアルファロメオと出会うことができる。
部長は今西に嫉妬していたこと 今西がしたかのような横領を捏造したこと。
今西は計算して部長を追い込んだことは、部長の話から窺がえる。
今西が部長に言った「兄」とはいったい誰のことだろう?
自殺した兄弟子だろうか?
そうである場合、今西には部長を助けようなどという思いはなかったことになる。
今西は、同じ兄二人を自殺に追い込んだのだろうか?
彼自身が自分のことを「病気」というように、彼の中にははっきりとした邪心があったのは間違いないだろう。
誰にも咎められるようなことをしたはずはないにもかかわらず、勝手な嫉妬心で悪者にされる理不尽さ。
今西がどうしても許せないこの人間性に対する反抗 仕返し
さて、、
今西は神戸の婚約者の工場で、いったい何をしようとしていたのだろう?
病気の延長線上にたどり着いた場所
ミステリーとして空恐ろしいシチュエーションだ。
どんなケースであれ、いつか近いうちにやってくるであろう神戸
計算しつくたであろう今西の心境が読み切れないが、行き場を失ってしまった今西は、神戸によって断罪されたかったのかもしれない。
その覚悟と、自殺による決着
いくら計算していても、結局は行き場がなくなって行き詰まっていた彼自身が浮き彫りになった。
神戸は婚約者に「最近変わったことはない?」と尋ねた。
彼女は今西の足跡を辿りながら、婚約者に接近しているのではないかと胸騒ぎしたのだろう。
久しぶりに見た婚約者
割とそっけない会話と、同時に感じる自分の本心
神戸は確かに会社命令で今西を探し続けていたが、彼女の本心が本当に好きだった人を探していたことに気づいたのだろう。
今西の日常の顔と過去の顔
そこにあった悲しい幼少期に、神戸は大きく共感した。
兄弟子たちに傷つけられたこと。
その中でも奪われた大切な万華鏡
彼が大切にしていたもの
同じものをもう一つ自分用に買ってみた。
それを覗き込むと見えるキラキラとした世界
当時今西が思い描いていた未来
似たようなことを神戸自身が体験した辛い過去があったのだろう。
似たように傷ついたこと
誰にも言えないこと
その時に顔を出す邪心の存在
「誰にでもあること」
自殺を思いとどまった今西
当時万華鏡に見た未来
それが奪われた時に顔を出した蛇
あの万華鏡によって、今西はもう一度未来を見ることができたのだろう。
わかりやすく、なかなか奥深い作品だった。
義太夫
口車に乗せて生かして殺す。全体的には淡々としているのに、よくよく考えてみると極悪メンタリストだったという話。好きな人だからこそ幸せになってもらいたいと自分は身を引く、才能があるにもかかわらず爪を隠すような人生を送り続けていた今西課長(西島)。違った生き方もできたろうに・・・
行方不明となった今西を探すよう命じられた部下の三辺陽子(永作)は、調べていくうちに謎めいた人物像に迫っていく展開。ではあるが、おぞましい部分は妾の子と蔑まれた幼少期の頃だけだったろうか。親を憎んでいたということも判断が難しいほど若年メンタリストだったからややこしい。
関西弁には難があったけど、ちょっとした魅力もあった西島秀俊。過去の女性関係も見えないくらいに隠れた男色傾向もあったかもしれない。今西に関わった人物の中で唯一被害に遭ってない(?)板尾創路の過去も気になるところだが、それほど好かれてなかっただけなのかな・・・そして、今西の行方に陽子が気づかなかった場合のムロツヨシの今後も気になる・・・
若い!
サイコパスといえば西島秀俊
西島秀俊の関西弁は頂けない
ものすごくいい作品。
設定もストーリーも 空気感も良かった。
ただ、関西弁でなければならない話なら もうちょっと関西弁のできる俳優さんでお願いします。
西島秀俊は好きな俳優さんなので併せて残念。
関西出身ではないのに 関西弁の上手い役者さんって
います。
私が 上手いと思うのは 安達祐実。
驚くほど上手。
標準語ではない作品は、その不自然さが気になると私の場合もう全然 話が入って来なくなるくらい気になる。
関東圏の人は方言に寛容な人が多いが、そこはもうちょっと重要なファクターであると製作側に認識して欲しい。
そう言えば、九州弁でびっくりするくらい上手だったのが
「悪人」の樹木希林。
お互い九州出身の夫と
「こういうおばちゃん、何百人もいるね」と感心したものだった。
この作品 関西圏の人は 見ていてどう思うのか
聞いてみたい。
蛇と偽りの光
ポイントは、
今西さんが故意に(計算で)人を不幸にしたかどうか。
を、どう解釈するかで楽しみ方が変わる映画。
人間だれしも「蛇(邪)」を持っていて、
それは時に欲望にもなるし希望にもなる。
今西さんはそれを”希望”と捉え、
おせっかいにも他人に介入する。
結果的に不幸になりはしたが、
本人たちには、その今西さんの言葉が
”希望”に思えた。
そう。今西さんは本当に”希望”だと思っていた。
しかし、それは万華鏡のようなおもちゃを
通した偽りの光(希望)。
唯一、今西さんの思い通りにならない三辺。
なぜなら三辺も同じ蛇を持つ人間だから。
しかし、その三辺から渡されるおもちゃの光。
「偽りの光でもいいから光を見失うなよ」
という三辺から今西へのメッセージ。
蛇は誰の心の中にも存在する。
それでも、偽りでもいいから、
光を目指して進めばいいじゃん。
ラストシーン。
夜の街を口笛を吹きながら歩く三辺。
まるで”蛇よ出てこい”とでも言いたげな
長い長い口笛。
もう私は大丈夫。
蛇が出てきてもその対処法を知っているから。
良い雰囲気の映画
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