「人間臭い愛情に満ちている」まほろ駅前多田便利軒 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人間臭い愛情に満ちている
三浦しをんの同名小説を大森立嗣監督が映画化。
「ゲルマニウムの夜」「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」など同監督の作品はなかなかに馴染み難いものが多いが、本作はすんなり見れる作品に仕上がっている。
(監督は父に麿赤兒、弟に大森南朋がおり、二人は脇役で出演もしている)
まほろ市の駅前で便利屋をしている30男、多田。偶然高校時代の同級生、行天と再会し、共に行動する事に…。
いわゆる男二人の友情モノだが、熱く固い絆というより、微妙な距離感があるというかユル〜い感じというか、所々スパイスが効いた脱力系バディムービーなのがユニーク。
真面目な多田=瑛太と掴み所が無い行天=松田龍平が最高!
「なんじゃあこりゃあ!?」「誰?全然似てない」…思わずニヤリとしてしまうコミカルなやり取りや、それぞれ抱える哀愁を滲ませ、その絶妙な好演が共感を呼ぶ。
特に松田龍平は独特の存在感や佇まいが偉大な父に似てきてとてもイイ!
便利屋に仕事を依頼してくる人々はワケアリが多い。
一家の夜逃げで大好きなチワワと引き離された少女。
チワワの引き取り手となった風俗嬢の家のドア直しと付きまとう男の対処。
親の愛情が薄い小生意気な少年の送り迎えと彼を苦しめるバイト。
大小様々な問題を解決していく様は、便利屋というよりお助け屋。ささやかな幸福と希望を運んでくる。
後半、ヤバい事態に巻き込まれた事をきっかけに、二人は図らずも過去と向き合う。
家族を失った多田と、家族を絶った行天。
本作では他にも家族に問題を抱えている者が多い。小生意気な少年も風俗嬢に付きまとうチンピラも。
皆、愛に飢えている。
愛したい多田と愛されたい行天、凹凸のように心にポッカリ空いた穴を埋め合う。
人間臭い描かれ方に好感。
じんわり心に染み入る良作。