「1,2の、3!!」SUPER 8 スーパーエイト ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
1,2の、3!!
「クローバーフィールド」などの作品で知られるJ・J・エイブラムス監督が、ハリウッド映画界の重鎮、スティーブン・スピルバーグを製作に迎えて描く、冒険活劇映画。
エンドロールで流れる何とも小粋な8ミリ映画。ここに、本作が観客に伝えたい想いが凝縮されているのかもしれない。
思いがけず始まる8ミリ作品。観客は予想していない展開に驚きつつも、その小さな物語に意識を持っていかれる。その横で申し訳なさそうに流れていくキャスト、スタッフの名前は、二の次のような扱いに落ち着いている。
そう、この作品・・・興行よりも、子役キャストの売名行為よりも、映画を観に来てくれた観客をもう一度、映画館という空間に連れ戻すという役割を担わされているのだ。
宇宙からの使者が大暴れするスペクタクル、ささやかながら観客の共感を誘う家族愛、ほわ~んとした団子っ鼻少年と、美少女のラブストーリー、そして少年少女が格好良く疾走するジュブナイル。
この濃密てんこ盛りの娯楽要素を、適材適所の演出力と現代アメリカ映画界のシンボルであるスピルバーグへの敬意の元に美味しく料理。恐ろしくも、どこか可愛く、やっぱり気持ち良い大冒険活劇として、堂々と観客に召し上がっていただけるレベルに引き上げている。
ぎらぎらCG世界、何人死んだのか分からなくなるような入り組んだストーリー、そしてやけにリアルな殺害描写が横行する現代映画界に胃もたれを感じる観客を、改めて心躍る、希望溢れるハリウッドの夢空間へ導くために。志は高く、腰は限りなく低く。1、2の、3!!の勢いと力強さで興奮の幸せへと連れて行く、頼もしい勢いに彩られた作品だ。