劇場公開日 2011年6月24日

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SUPER 8 スーパーエイト : インタビュー

2011年6月20日更新

製作スティーブン・スピルバーグ&監督・脚本J・J・エイブラムス、初の本格タッグによるSF超大作「SUPER 8 スーパーエイト」が去る6月10日に全米で公開され、ついにその全貌を現した。完全秘密主義の宣伝展開を経て全米公開を迎えた本作は、当初のSF系モンスター・パニック映画という予想から一転、スピルバーグ監督作「E.T.」の再来との評価も高く、週末の興行収入ランキングで堂々の第1位を獲得した。日本公開を24日に控え、ワールド・ツアー中のシンガポールに滞在していたエイブラムスに、本作に込めた想いを聞いた。(取材・文:鴇田崇)

J・J・エイブラムス監督インタビュー
「僕は、子ども時代へもう一度戻ってみたかっただけなのさ」

スピルバーグとの二人三脚により、見事な“アンブリン映画”を完成させたエイブラムス
スピルバーグとの二人三脚により、見事な“アンブリン映画”を完成させたエイブラムス
監督作としては3本目だが、続編やリメイク ではないオリジナル作品としては初監督作
監督作としては3本目だが、続編やリメイク ではないオリジナル作品としては初監督作

SUPER 8 スーパーエイト」にまつわる情報が乏しかった時期、同作は「エイブラムスによるスピルバーグ監督作品へのオマージュ」という解説がなされていたが、プロジェクトそのものはエイブラムスの個人的な想い、すなわち少年時代の探訪がメインテーマだった。

「ストーリーのアイデア自体は、当時スーパー8カメラで映画を作っていた子どもたちのことを語りたいという気持ちから生まれたものだよ。実際、僕自身も父のスーパー8カメラで映画作りに夢中になっていて、とても特別でアナログな体験をしていた。だから、もともとは自伝的な要素のあるアイデアだった。もちろん、その後のハイパーリアルでクレイジーな世界は、僕が実際に経験したものではないけれどね(笑)」。

エイブラムスの言う“その後”とは、映画に登場する少年少女、オハイオの町の人々が経験する“未知との遭遇”のことを指す。彼らはスーパー8カメラ(8ミリカメラ)で映画を撮影中に、大規模な列車事故に遭遇。現場に置き忘れたカメラに“何か”が映っていて、やがて町全体を巻き込む一大事件に発展していくのだ。このアイデアを気に入ったスピルバーグは、エイブラムスの申し出を快諾。製作を務めることになるが、単なる名義貸しによる形式的な参加ではなく、エイブラムスとの二人三脚で映画を作っていく。

「スティーブンはストーリー作りや脚本作りを手助けしてくれたし、デイリー(その日に撮影した部分)を見たり、キャスティングにも意見を言ってくれて、すべての段階で関わってくれた。だから彼に唐突に『こんなシーンになりました』と見せることはなかったし、どんなシーンになるかちゃんとわかっていた。スティーブンはちょうど“War Horse”という作品を撮っていたけれど、こちらから彼にビデオをしょっちゅう送っていたし、テレビ会議も何度もした。セットにも確か3回来てくれた。この映画のスピリット、アンブリン映画(スピルバーグが1982年に設立した映画・TV番組の制作会社、アンブリン・エンターテインメントによる作品群)の世界のようなスピリットが彼も僕も同じように大好きだったし、こういう映画を一緒に作れたことが本当にすばらしい経験だったよ」

主人公の子どもたちには、スーパー8カメラで 映画を作っていた自らの少年時代を投影
主人公の子どもたちには、スーパー8カメラで 映画を作っていた自らの少年時代を投影

とはいえ、その内容は過去のスピルバーグ映画を単純になぞるようなものではなかった。それどころか、スピルバーグ映画を連想させる直接的なアイテムは何もない。舞台設定は79年、すなわち少年少女たちは「未知との遭遇」を観ているはずなのに、映画マニアの彼らから、その種の話題は一切出ない。彼らの部屋にはゾンビ映画のポスターが貼られているという具合に、およそスピルバーグを連想させるものは何1つ映り込むことはないのだ。

「そうだね。この映画には“スティーブン・スピルバーグ映画”の痕跡が何もないね。本来なら、『ジョーズ』や『未知との遭遇』のポスターが壁に貼られているべきだよね。でも、スティーブンがプロデューサーをしているために、彼の作品を想起させるものは避けなければならなかったのさ。それが彼と一緒に仕事をすることの唯一のマイナス面だったかな(笑)」

ただ、結果として、スピルバーグ映画、アンブリン映画の洗礼を受けて育ったエイブラムスは、“「E.T.」の再来”という最高の賛辞を得る感動大作を作り出してみせた。過去の監督作品を振り返ってみても、オリジナル作品へ敬意を払い、惜しみない愛情を注いで自分なりの映画に仕上げてきたエイブラムスの仕事を考えれば、それは当然の帰結だったと言えるかもしれない。

「僕は、アンブリン作品、スティーブンの作品、ジョン・カーペンターデビッド・クローネンバーグの作品に影響を受けているけれど、その当時を連想させるような、僕の子ども時代へもう一度戻ってみたかっただけなのさ。『SUPER 8 スーパーエイト』は、個人的で自伝的なストーリーで出発したプロジェクトだったけれど、最終的には僕が夢中になっていた映画にオマージュを捧げ、感謝の気持ちを表したことになったと思うよ」

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