「最後に無性に回転寿司が食べたくなるのは、ファンとしてせめてもの追悼の意なのかもしれない」相棒 劇場版II 警視庁占拠!特命係の一番長い夜 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
最後に無性に回転寿司が食べたくなるのは、ファンとしてせめてもの追悼の意なのかもしれない
自分達の本部が犯人に襲われる構図は、最大のライバルかつ凡作の中の凡作だった『踊る大捜査線3』と全く同じで不吉な予感が走った。
しかし、粗雑な物語をキャラクターが同窓会のノリで茶を濁して大不評だった『踊る3』を教訓にしているのか、緻密な人物描写と層の厚い犯罪心理を引き出しては、娯楽映画として詰め込み、飽きさせない仕上がりとなっている。
前作では頭脳戦を右京が、体力勝負は亀山が受け持ち、役割分担が明確化されていたのに対し、新パートナーの神戸は華奢で右京タイプに属するためバランスが崩れている印象は否めない。
指南とも対立とも違う2人の距離感の不安定さが、前作と一線を画す世界観の構築に繁栄されていると感じた。
東京ビッグシティマラソンを拠点に推理戦よりアクションに重点を置いた前作とは一転、今作は事件を操る影の権力への対立に迫る重々しい組織サスペンスに変貌し、本来の『相棒』が持つ心理戦を導き出している。
組織に黙殺される人間の葛藤をえぐる掘り下げ方が、ターゲット1人1人の本性をさらけ出す。
そして、立ちはだかる権力の壁に苦悩する深き迷いこそ、新生相棒の大きな特色ではなかろうか。
亀山不在のため、籠城犯の写真撮影etc.も右京が体を張って挑み、当初は神戸の存在意義を問う事がしばしばだったが、元エリートの人当たりの良さと人脈を活かし、第2幕以降、上層部へのインタビュアーとして、実力を発揮。
特に真実を追求する上で欠かせない大河内監査官(神保悟志)との衝突は、腐ってもキャリアの神戸でなければ成立できない攻防の象徴と云えよう。
劇場にてようやく新しいコンビネーションの魅力がわかったような気がする。
しかし、腐敗した上層部への告発がテーマであるゆえ、警察庁まで巻き込み圧力の渦が更に威力を増し、真実が歪められたまま、唐突に途切れてしまう終わり方はやり切れないにも程がある。
後味の悪さはもどかしい一言に尽き、逃げるような手法に卑怯すら感じた。
だが、テロと政治という魑魅魍魎極まりない厄介なテーマを用い、2作を通して警察の正義感を問いただす一貫したメッセージ性は、テレビの特番では絶対に収まりきれないスケールを創りだしているのは事実である。
では最後に短歌を一首
『影の撃つ(打つ) 裁きに沈む 官(棺)の群 暴く踏み(文)跡 贖罪(しょくざい)の城』
by全竜