「誰のための才能か。」小さな村の小さなダンサー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
誰のための才能か。
名画座にて。
リー・ツンシンの激動の半生を綴った自伝
『毛沢東のバレエダンサー』を映画化した伝記ドラマ。
毛沢東の文化政策により、幼くして家族と引き離され、
バレエの英才教育を受ける主人公、リー・ツンシンが
一流ダンサーとして花開くまでの軌跡が綴られている。
バレエのドキュメンタリー映画はよく観ているが、
これほど劇的な運命を背負わされたダンサーも珍しい。
中国という国の強烈な主張をこの作品でも見せられた。
ただ、作者でもあるリー氏の才能はそのバレエによって
開花し、オーストラリアで数々の公演を成功させたらしい。
実話ならではの感動があちこちに詰まっている佳作。
また、リーを演じた3人のダンサーたちが素晴らしく、
青年期のリーを演じたツァオ・チーは自身も中国出身、
バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルだそうだ。
その身体能力や舞踊の素晴らしさも今作の魅力である。
彼の最初の妻を演じた女優を見た覚えがあって「?」と
思ったらなんと、「センターステージ」のA・シュルだった。
今作でも彼女は「才能がない」とか言われちゃって^^;
顔は可愛いので女優向きなんだろうか…分からないけど、
また観られて嬉しい。
バレエダンサーとして脚光を浴びるのは大変難しいこと
なのだろうが、その訓練を(中国のは怖いくらい殺人的)
積み重ねてやっと(才能あるものが)花開くことを知った。
芸術というのは得てしてそうなのか、
過酷な闘いとは正反対の感動がこちら側に与えられる。
彼は多くの苦しみを味わったが、同時に、自分を助ける
ために奔走する人たちの愛や思いやりにも触れている。
それが自身の踊りに反映されていたと信じてやまない。
(もし先生がリーを推薦しなかったら?…運命ってすごい)