「大葉栄大尉の行動を通じて、日本に足りなかったものを考えさせられた」太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
大葉栄大尉の行動を通じて、日本に足りなかったものを考えさせられた
平山秀幸監督による2011年製作(128分/G)日本映画、配給:東宝、劇場公開日:2011年2月11日。
未読だが、敵将であったドン・ジョーンズによる原作によるらしい。玉砕が普通で民間人を平気で巻き込む戦闘が当たり前だっただけに、民間人は捕虜として差し出し、最後まで部下を統率して闘い続けた大場栄への大いなる興味は湧き立った。
ただ、彼に関する資料が残っておらず仕方が無いところがあるが、どういう思いで彼がそういう行動をとったのか分からず、大いなるモヤモヤは残ってしまった。まあ、軍士官学校出ではなく学校の先生だったキャリアが、まともな判断をもたらした様であったが。
そうすると軍大では何を教えていたのだろうか?最後まで抵抗する、或いは捕虜となって撹乱を図る方が、玉砕よりよほど戦争目的に合致していると思うのだが。あと、戦後もずっと生きていたのに、大場栄の類稀なリーダーシップ等に関して、なぜ自衛隊等からきちんとした聞き取り調査がなされていないのか?結局、戦争を科学的に捉えることができない国ということなのか?設備ばかりにお金掛けても、国防に重要な大事なとこが抜けている様な。
大場大尉を尊敬するルイス大尉を演じたショーン・マクゴーワンはとても好演だと思ったが、日本兵を説明するのに、敵にそのまま簡単に使われる将棋の駒の例えは相応しくないと思ってしまった。日本軍を買い被りすぎだとも。
実際、大場大尉が終戦情報が流れてもその確認も取らず、12/1にようやく上官の命令で初めて降伏するというのは、部下の生死を握る大尉としては、教育のせいにしても、いただけないと思ってしまった。映画を作ってる方々のカッコ良いだろう演出とは裏腹に、大尉レベルで自ら最善を思考し自律的に動けない部隊など、戦争の役に立ちえない、本質的にカッコ悪いと思えてしまったのだ。
日本人は物量で米国に負けたと思っているが、本質的には考え方(合理性や科学的思考力)の差で負けたことを、悔しいが、痛感させられた。
監督平山秀幸、原作ドン・ジョーンズ、音楽加古隆、US監督チェリン・グラック、大場栄大尉竹野内豊、堀内今朝松 一等兵唐沢寿明、青野千恵子井上真央、木谷敏男曹長山田孝之、奥野春子中嶋朋子、尾藤三郎軍曹岡田義徳、金原少尉板尾創路、永田少将光石研、池上上等兵柄本時生、伴野少尉近藤芳正、馬場明夫酒井敏也、大城一雄ベンガル、元木末吉阿部サダヲ、堀内今朝松 一等兵唐沢寿明。