劇場公開日 2010年7月3日

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ガールフレンド・エクスペリエンス : 特集

2010年6月28日更新

リーマンショック直後、大統領選を控えた2008年秋のニューヨーク。高級コールガールのチェルシーは理解ある恋人とともに充実した人生を送っていたが、ある日出会った顧客の男性に心惹かれていき……。「オーシャンズ11」「トラフィック」のスティーブン・ソダーバーグ監督が、人気ポルノ女優サーシャ・グレイを主演に製作した恋愛ドラマ「ガールフレンド・エクスペリエンス」が7月3日より公開される。ソダーバーグの記念すべき監督20作目となる本作の魅力を紐解く。(文:小西未来

ソダーバーグならではのエッセンスが凝縮
観客にも恋人体験を提供する「ガールフレンド・エクスペリエンス」

ソダーバーグがインディペンデントな手法で撮り上げた注目の一作
ソダーバーグがインディペンデントな手法で撮り上げた注目の一作

■実験的手法とエモーションが調和した最良のソダーバーグ作品

小規模な作品だからこそ、人物の親密さが伝わる
小規模な作品だからこそ、人物の親密さが伝わる

スティーブン・ソダーバーグ監督にとって、「ガールフレンド・エクスペリエンス」は記念すべき監督第20作にあたる。デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」でいきなりカンヌ映画祭パルムドールを受賞した26歳の若者は、その後、メジャーとインディペンデントの間を自在に渡り歩きながら、バラエティ豊かなフィルモグラフィーを築いてきた。「オーシャンズ11」シリーズで大ヒットメーカーとなったいまも野心的な小規模作品をコンスタントに発表しており、彼が手がける低予算映画はときに前衛的すぎるきらいがあるものの、「ガールフレンド・エクスペリエンス」は実験的手法とエモーションが見事に調和した最良の作品といえよう。

ソダーバーグ自身、「久々に映画作りを心から楽しんだ」とコメントしているように、「ガールフレンド・エクスペリエンス」は遊び心に満ちている。最大の魅力は、テレンス・スタンプ主演の傑作「イギリスから来た男」と同様、ノンリニア構成になっていることだろう。ストーリーそのものはシンプルだが、印象的な台詞や映像がいたるところに散りばめられ、おまけに順序がシャッフルされているので、観客は頭のなかでパズルを組み立てる楽しみを味わうことができるのだ。ちなみに、脚本は時系列に沿って執筆されており、撮影もそのままの順序で行われたが、編集の段階でノンリニアに変更されたのだという。

■高級エスコートビジネスがあぶり出す、現代人の欲求と願望

裕福なビジネスマンたちがチェルシーに求めるものは…
裕福なビジネスマンたちがチェルシーに求めるものは…

物語の主人公は、時給2000ドルを稼ぎ出す高級エスコート嬢チェルシー(サーシャ・グレイ)だ。顧客の好みに合わせて完璧なガールフレンドを演じる一方で、スポーツトレーナーをしている彼氏と幸せな同棲生活を送っている。そんなチェルシーが顧客の一人に心惹かれたことで、完璧な人生が瓦解していく……。

高級エスコート嬢と並みのコール・ガールとの決定的な違いは、そのギャラだ。裕福なビジネスマンたちがチェルシーに法外ともいえる大金を払うのは、チェルシーの肉体だけでなく、彼女との会話や食事を求めているからだ。チェルシーが提供するのは、タイトル通り「恋人体験」なのである。

製作にあたり、ソダーバーグ監督と脚本家は徹底的にリサーチを行い、本物の高級エスコート嬢にも取材を敢行している。地位も金も名誉も手に入れた男たちは、なぜ恋人体験を必要とするのか? この作品は、現代人の欲求と願望をあぶり出していく。

■主演サーシャ・グレイが漂わせる、ドキュメンタリーのようなリアルさ

リアルな人間模様、ニューヨークの風景も見どころだ
リアルな人間模様、ニューヨークの風景も見どころだ

チェルシー役に抜擢されたのは、これまで180本のハードコア・ポルノ映画に出演しているアダルト女優サーシャ・グレイだ。彼女が起用されたのはヌードが要求されるからだけではない(この映画に露骨な性描写は一切ない)。むしろ、ポルノ業界に籍を置きながら、ポジティブに働く姿勢がチェルシーの人物像と見事に重なったためである。サーシャ・グレイをはじめ、主要キャストのほとんどが無名の素人で構成されているため、この映画にはドキュメンタリーのようなリアルさが漂っている。サーシャが身を包む最新ファッションをはじめ、デートで利用するニューヨークのブティックやレストランもすべて実在する。つまるところ、この映画は観客にも恋人体験を提供してくれるのだ。


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