キック・アス : 映画評論・批評
2010年12月7日更新
2010年12月18日よりシネセゾン渋谷ほかにてロードショー
快感のツボを次々に押され、見終えた後はスッキリ
まだちっちゃい娘に向けて、ズドンと一発。こちらでいえば小学3年ぐらいだ。女の子は仰向けに倒れる。防弾チョッキを身につけていて大丈夫とわかるが、さすがにドキッとするショットだ。父親は娘にむけてさらに一発。殺人機械となるための訓練のひとつなのだが、映画とわかりつつ、狙いを外さないか観客は不安になる。
というのもなにしろ父親ビッグ・ダディ役が公私ともにぶっ壊れているニコラス・ケイジだからだ。ところがいいのだな、この元刑事のケイジが! これほど引き締まって無駄のない演技を見せるケイジは初めて、失礼、久しぶりのような気がする。そして彼が演じるビッグ・ダディの娘ヒット・ガール役がクロエ・グレース・モレッツ。いやいやいや、大好き!!!!! いいのかこんないたいけな子にこんな残酷をやらせて、と思うが、とにかく、父親の復讐の片腕として大量殺戮を楽しそうにあらゆる武器を駆使してやってのける。彼女の敏捷な身のこなし、マスクから覗く可愛い瞳、身体の戦闘力と連結してまくりあがり、四角形を作るクチビルがかわいい!!!!!
とにかく、悪い奴らは皆殺し、殺しの快感が彼女の少女未満の身体から直接的に伝わってくる。こちらの快感のツボが次々に押され、見終えた後はスッキリとし、とてつもなく幸せになるのだ。ビッグ・ダディ+ヒット・ガールがプロフェッショナルとすれば、キック・アス(アーロン・ジョンソン)はアニメの正義感がそのままコスチュームを着けてストリートに出た、というボンクラ扱い。とにかく、いかした脚本だ。
(滝本誠)