「大阪への視線の欠如」プリンセス トヨトミ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
大阪への視線の欠如
原作の肝は大阪という町の持つ独特の雰囲気、よそ者から見るとなんともたそがれている街並み、そこに生きる飄々とした人々ではなかろうか。あれは一体どこから来るものなのか?という、部外者の疑問にファンタジーを通して答えているのが、このお話なのだと思う。
さて、この映画作品はどうであろう。ここで描かれている大阪の街並みや人々は、全国に広く流通するステレオタイプのイメージばかりだ。その一面を否定するつもりはないが、観光客の視点ではなく、大阪の街の人々の日常生活、それを支える都市の構造についてもっと言及しなければ、大阪が他の日本のどの都市よりも個性の際立つ街であるということを語ったことにはならない。この映画に欠けているのは、大阪の街と大阪人が常に帯びている憂いとそれを晴らすユーモアへの眼差しではなかろうか。
CGを活用するのならもっと大阪という都市のもつ構造を視覚化出来ただろうし、建築の持つ歴史とそこに宿る人々の念を表現することだって可能だったはずである。
なによりも、カメラの視線が大阪の街と人々に向いてはいない。カメラがとらえているのは、綾瀬はるかのおっぱいである。このことがこの映画の全てを表わしていると言っていい。
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