「あ〜!昔に戻りてえ〜!」君に届け 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
あ〜!昔に戻りてえ〜!
『おと な り』:『虹の女神』の監督らしく、切ない青春初恋物語が胸を打つ。
原作のコミックも、アニメ化された作品も知らずに、実写化された本編のみでの感想。
個人的には満点です。やられました。
作品の基本ラインは、初めて出会った2人の若い男女の。まだ《恋》とは言えない“ときめき”を胸に秘めながら、やがてその狂おしいまでの想いを「どうにかして伝えたい…」感情の揺れ動きを映像化しています。
初めて出会った時にヒラヒラと舞い落ちて来た1枚の花びら。
その瞬間2人の間に、初めてと言える感情が沸き上がる。
完璧なる爽やかな彼。
完璧なまでに虐められキャラの彼女。
そのあまりのキャラクター設定には、始めの内は度々苦笑混じりに画面を見つめていた。
やがて彼女の本質を知っていた彼と、彼女の内面を知る事になる2人のクラスメート。
前半のクライマックスにあたる友情場面では、おじさん恥ずかしながら号泣しながら観ていました(汗)
いや〜友情っていいな〜♪
後半は一転して、好きな人に対してどうやったらその想いを伝える事が出来るのか…。登場人物達の1人1人が思い悩む。
正直言って、前半のテンションがMAXにまで上がり続けていた為に、後半の終わり近くまでは多少苛々しながら観ていたのも事実です。だからと言って、後半が酷い内容…って訳でも有りません。寧ろ後半だって前半に負けず劣らずでは有るのですが。まあそれだけ前半で感情移入させられていた証しでも有る訳です。
これまでの熊澤作品同様に、2人が会話する場面ではカメラが微妙に動き廻るのは同じなのですが。それまではどこか巧いのだけれど、何となくテクニック重視…な面が見え隠れしていたのですが。この作品での2人の若い男女による、“恋”とも“愛”とも言い難い、“切ない気持ち”の感情を表すのに、見事なまでに嵌った感が有りました。
等身大の高校生役を、悪役キャラの面々を含めて出演者達ほぼ全員が好演。中でも連佛美沙子が本当に素晴らしかった。もう今年の助演女優賞は彼女で決まりです。あくまでも個人的ですけどね(苦笑)
多少の不満が有る事は有ります。タメ口の先生のキャラクター設定は、おそらく原作のコミックを知らなければ訳が解らないだろうし。彼女が大切にしていた1枚の花びらは、その出会った時の“ときめき”の象徴なのだから、映画本編を締めくくるのはやはりその花びら舞い落ちる場面こそが相応しい…のでは?と。
そんな不満を抱きつつも、画面上に映る若い人達を羨ましく思いながら見つめていた。
「ちきしよ〜!こいつら青春してやがるな〜!!」
(2010年10月9日TOHOシネマズ錦糸町No.8スクリーン)
※日付けは公開年度