劇場公開日 2010年10月30日

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「「かもめ食堂」や「トイレット」とは似て非なるもの」マザーウォーター マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0「かもめ食堂」や「トイレット」とは似て非なるもの

2010年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まったりとして癒されるようなちょっと羨ましい生活、そこに「食」を持ち込んだスタイルで、ひとつのジャンルを築いてきたプロジェクトによる新作。
何が起こるというわけでもないお馴染みの展開だが、今作はただひたすら眠くなる。観ていて飽きる。わたしはこの手の映画を脱力系と呼んでいるが、気負わない普段の生活を送る、いわば人々の生態に興味を惹かれるから飽きないのだ。
テーマの“水”だが、ふた通りの要素が描かれる。その土地に馴染む、いわゆる[水に馴染む]と、水と生活との直接的な関わりだ。
水に馴染むという部分が人間模様を反映するわけだが、登場人物7人がまったく同じ流れになってしまっている。河にも速い流れのところと遅い流れのところがある。7人も使って、どこを見ても同じ流れでは、河を眺めていても飽きようというものだ。
水と生活の関わりにしても、水割りだのコーヒーに豆腐屋と銭湯というのは、あまりに安直すぎる。そこに水の音だけ被らせてもドラマは生まれない。水を使って分厚い鋼鉄を切断する工場でも出てくれば面白いだろうが、設定にまったく機転が利いていない。おまけにカメラは左回りにしか動かず、そのワンパターンの映像に睡魔が襲ってくる。
もうひとつのテーマ、「食」に関しては、かき揚げが見た目にも美しく、油のはぜる音が食欲をそそるが、けっきょくいちばん美味そうだったのは豆腐だったというのは物足りない。
小泉今日子と加瀬亮は演技しているというより、ほんとに自然体で、作品の小さな世界に文字通り水のように溶け込んでいた。対して小林聡美は、どこか計算した演技になって鼻につく。もたいまさこは相変わらずの珍獣ぶりで、すっかりシリーズの顔になった。
河の流れの中を、あっちにこっちに行き来して目を楽しませる小さな落ち葉の役を赤ん坊に託したのかもしれないが、川面は描けても川底の営みは伝わってこない。
「かもめ食堂」がなぜ成功したのか、小さな生活圏に人々が集まる楽しさと、人々の思惑が空気のように伝わってきたからだ。「プール」あたりから、計算が先立って、人工的な自然体になっている。「かもめ食堂」や「トイレット」とは似て非なるもの。

マスター@だんだん