遠距離恋愛 彼女の決断 : 映画評論・批評
2010年10月12日更新
2010年10月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー
脚本のセンスが抜群の笑えるラブコメ
キャラクターのアンサンブルが面白くて気持ちよく笑える極上のラブ・コメだ。恋人たちはニューヨークのレコード会社に勤める30男のギャレット(ジャスティン・ロング)とサンフランシスコで新聞記者目指して勉強している30女のエリン(ドリュー・バリモア)。裏表がなくて真っ正直なために、恋のテクを使いすぎる元カノにふられたばかりのギャレットと、率直で自分を飾らないエリンは誰が見ても相性抜群。酒の席で生まれた一晩のアバンチュールが本気の恋に変わっていくプロセスが楽しく心に響く。
そんな2人の遠距離恋愛を盛り上げるのが、ギャレットの友人たちとエリンの姉コリーン。日本ではあまり知られていない俳優たちだが、主役を食いすぎず、それでいてしっかり自分を印象づける絶妙の間合いがお見事。主役が東海岸と西海岸に分かれているのに、話がバラバラにならず一体感があるのは彼らのおかげだ。セックスがらみのきわどいジョーク、音楽知識披露ギャグ、そして何より映画ネタジョークが冴え渡ってゲラゲラ笑いの連続。マイケル・ベイをコケにしたシーンでは拍手したくなった。何より拍手したいのは遠距離恋愛の解決策。サブタイトルに「彼女の決断」とあるが、実は決断するのは彼の方。仕事をとるか恋をとるかという命題はもはや古典だが、彼の決断は新しくて賢い! かつては花形職業だったが今や斜陽の新聞と音楽業界を舞台にしたところといい、脚本のセンスが抜群だ。
(森山京子)