「「あした」って何時代だっけ?」あしたのジョー こばこぶせんさんの映画レビュー(感想・評価)
「あした」って何時代だっけ?
『ヤマト』でも書いたのだけれど、映画界の構想力ないんだろうな。
昔社会現象を起こした作品だから、山P出てるからって以外で集客できないんだろうな。
この作品、正直、ドラマで感動させるとか、ストーリー展開でうならせるとかとは違う作品である。自分もついつい乗せられて(だまされて?)、映画ではどのように表現するのだろうって興味だけで見に行ってしまった。
またまた、お金をかけた大人の遊び(コンピュータと豪華キャスト使ったら、どこまでマンガを表現できるかな)に付き合ってしまった。
豪華キャストなのだが…。
金持ちの大御所風な人物は津川雅彦、エキセントリックで準主役級な人物は香川照之ってのは、ついでに言って主人公はあの事務所ってのはやめませんか。スポンサーのためか、何の影響か分からないけど、監督や演出家の創造力が欠けているように見えてしまう。
ストーリーは、ジョーが刑務所に入って……力石と対戦して、力石が死ぬまで。ジョーが一旦街を離れるものの、戻ってきて次への展開も予感させますが、まぁストーリーは、皆さんご存じのとおり。
よせばよいのに、マンガチックな表現にこだわったり、小ネタを挟み込もうとするから、(2時間という制約の中で作るから、いろいろ大変なんだろうけど)アラばかりが目立ってしまう。
他のレビュアーも書いていますが、見所は力石だけかな…。本当のところは、白木お嬢様が香里奈で、けっこういい感じと思えたからなんだけど。
アラについて、箇条書きで…。
○顔だけならいい線行っていた香里奈。しゃべったら、動いたら…。上品さにかなり欠けました。とても残念。これが、(原作にはないエピソードだと思うが)ドヤ街で育った影響を演出したのなら、すごいかも。
○ジョーの使うクロスカウンターは、本当の競技で使うものとは違うらしいのだが、(マンガもそうなので、それをいったら酷になるのだけど)何故相手のジャブに合わせるの?相手の利き腕ではないパンチに合わせたら、大して威力ないじゃん…。最初に力石とクロスカウンター決めたのは、マンガの表現に忠実で…私には微妙でした。
○マンモス西。映画版では、牢屋の中でもすっかり地位の低いマンモス西。ジョーと一緒にトレーニングしても、まったく体の締まらないマンモス西。サボってんじゃないの?かの有名な「鼻うどん」を、ムショ内の乱闘シーンで使うんですか?本来、マンモス西の意志の弱さを表すよい描写なのに…。
○力石すごい。格好いい。伊勢谷友介すごい。ジョーとの対戦に向けて、よく減量にも耐えた。でも、一日であんなに体が戻るの?すっかり戻ってしまった体で試合に臨んだので、ジョーとの対戦における悲壮感が少し欠けたな…。
○そして主人公のジョー。山Pファンには悪いけど…、微妙…。よく鍛えたし、格好いいし…それは問題なし。でも、髪の毛が、鬼太郎状態。アレでは試合に集中できん。原作がアレなので仕方ないのだろうけど。ついでに言うと、タンポポは根が深い草なので、力石の墓前(砂利の部分)に供えても根付きません。供えるとしたら、墓石の上がよい。
○一番困ったのは、時代感がないこと。路面電車、ドヤ街の雰囲気、物価…昭和30年代か40年代だよな。ドヤ街はこだわって描いたのだろうけど、周囲の描写は気を抜きすぎである。ちらちら新しい建物が見えたり、バリアフリーへの配慮が見えたりする。それに気付いたのは、ムショ内でのジョーと力石との対戦中だが、リングの周囲に現代のマンションが見えるは見えるは…。全体の雰囲気が、かなりぶち壊されます。