「ドラマでありながら、ドキュメンタリーの様な静かで重みの有る作品」ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマでありながら、ドキュメンタリーの様な静かで重みの有る作品
ジョン・レノンの生い立ちを忠実に映像化したと言うが、この「ノーウェア・ボーイ」は、彼がビートルズのバンドメンバーを結成し、デビューする迄のプロセスを描いた青春映画と言うよりは、彼が彼たる所以がどの様な、生い立ちを経て、彼の家庭環境がどの様にその後の彼の心に影響し、音楽や、人間的な生き方にどんな影響を与えて行く事になっていったのか、そのジョン・レノンの心の原点を描き出している点が凄く興味深かった。
それはドラマと言うより、まるで家庭用8ミリ映画で当時にタイムスリップして、ジョンの様子を撮影し、再現しているように、淡々と、少年が青年から大人へと次第に成長する過程を、静かに描き出してくれているのだ。
彼も特別他の青年と変わらない多感な思春期を静かな田舎町のリヴァプールで過ごしていた事が明かされる。唯一の違いは、伯父夫婦に育てられた事から来る、生い立ちに関する悩みを抱えながら精一杯の力を出し切って、10代を生き抜いていたと言う事実だろう。
そして、父親の事、母親の事で悩む事は、彼のアイデンティティーに大きく作用していき、
不良少年として、学校に馴染めない生活を送る中でも、活発に好きな事へと情熱を傾けてひたすら頑張っていく青年の姿が、可愛らしくて、微笑ましく、好感が持てて改めて彼の魅力の一端を垣間見た気がした。
しかし何と言っても、その後の人生で大成する子供は、何処かが、他の平凡にその人生を過ごして生きていく子供達とは、何かが違う、その違いみたいなものは、絶対に彼一人の才能で、誰にも真似が出来ない空気を身にまとっているものだと、運命の不思議な力見たいなパワーが彼を取り巻き、運命を動かして行っている事が覗えるのだ。
エルビス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」でロックンロールの洗礼を受けた後の彼の姿と言うよりジョンの運命は、自然と不思議な糸に寄って導かれる様に、ポール・マッカートニーとの出会いが起こり、デビューへとスーパースターの道を歩んで行く。
ビートルズが後に世界的ヒットチャートを更新し続ける一方で、オノヨーコとの出会いの中で、ソロ活動へ転身を果たしたり、「ベッド・イン」など、不思議な行動をしでかす、ピースアクティビストへと傾倒して行ったりと、その不思議で過激な行動の、総ての原点こそは、この思春期での家族との葛藤こそが、原点となっている事を感じさせるのだ。
71年の「イマジン」や、熱烈なファンによると言うその銃弾に倒れ、この世を去る事になる、直前の「ダブルファンタジー」などの事を考えて見ると、やはり運命は決まったレールの上を走っているのだと、観察者として第三者の立場から彼の人生を考えて、眺めて見ると言える気がするのだ。
今では伝説のスーパースター、ジョン・レノンのファンは勿論の事、彼の事を知らない世代の、彼の音楽に余り興味を持っていない人にも、この作品は楽しめるし、将来に悩み、自分探しを始める、ティーンエイジャーの人達にもピッタリだ、全くロックや、音楽への関心が薄い方にもこの「ノーウェア・ボーイ」を観る事はお薦めですよ。「サラの鍵」や
「ずっとあなたを愛してる」などに出演しているクリスティンスコット・トーマスら、演技派の女優を配して素晴らしい作品に仕上げている事もこの作品の魅力なのです!