「なぜ彼は愛を謳ったか。」ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ彼は愛を謳ったか。
若き日のJ・レノンにスポットを当てた青春伝記映画。
もちろん実話に基づいているが、リアル世代でない私
ですら、彼の生い立ちや生き様にはとても興味がある。
学生時代からずっと見ている「ベストヒットUSA」という
番組の中に(今も2010として深夜にやってる)彼の伝記
「大いなる伝説」というコーナーがあって、彼の生い立ち
をずっと解説し続けている。その中で語られてきた彼の
二人の母との葛藤や、デビューまでの紆余曲折が総て
ありのまま描かれていたのにはとても感動してしまった。
TVは劇画タッチで描かれており(小林克也の声で解説)
雰囲気は伝わるもやはり生身の演技で観たいと思った。
向こうでも大ヒットしたそうだが(おまけに、監督と主演の
A・ジョンソンが結婚しちゃったし^^;23歳年の差婚だと~)
さすがに出来がいい。二回観て二回とも泣けてしまった。
彼の才能や技術を謳った作品かと思いきや、なぜ彼が
J・レノンとして形成されたかが伝わる愛の物語であった。
実は彼には産みの母(妹)と育ての母(姉)がいた。
彼の意思にかかわらず、彼が五歳の時に姉が選んだ
選択だったのであるが、なぜそんなことになったのか。
冒頭ですでに厳格なミミ(伯母)からこっぴどく説教を
うけながら学校に通うジョンが描かれる。姉のミミは
かなり厳しい性格だったようだ。ジョンが大好きだった
伯父に愛の言葉を囁くでもなく^^;その伯父が他界して
二人きりになってからは、なお一層彼に厳しく接する。
そしてジュリア(実母)の居所を知ったジョンは彼女の
家に入り浸るようになり、そこで音楽の楽しさを知る。
姉とは対照的で「ロックはセックスよ♪」などとのたまう
奔放な母。彼は当然のごとく実母に惹かれていくが…
私に二人の母はいないので^^;彼の気持ちは分からない。
だが、自分を恋人のように扱う実母が、ではなぜ自分を
育ててくれなかったのか?これは誰もが感じる疑問だ。
最も多感で人恋しい年頃である。なんだか彼を観ていると
私の大好きなJ・ディーンとどうにも重なって見えてしまう。
彼の母親は早死してしまったが、その後父親との関係が
上手くいかず、再婚と共に叔父の家に預けられるが、
その家に実子ができたため、そこを出て俳優の道へ進む。
僕は親に愛されなかった。と思い悩む描写がジョンと似て
おり、さらに母親が好きだった道(ディーンの母は演劇)へ
進もうとする(親子だからねぇ)ところもとてもよく似ている。
蛙の子は蛙とはよく言ったものだが、才能はそんな転機
を経て、彼らを独特な世界観を持つスターへと導いた。
さらに共通するのは、彼らは母親の愛を欲しがったけれど、
実はものすごく愛されて育っているのだ。今作のラストでは
ジョンがそれに気付くところまでが丁寧に描かれている。
何しろ嬉しいのは、ビートルズのナンバーにもなっている
「ストロベリーフィールズ」や、前身の「ザ・クオリーメン」、
「キャバーンクラブ」などがさりげなく出てくる。そして親友
だったピートのバンドからの脱退など、メンバー変遷の歴史
もきちんと描かれる。もちろん!ポールとの出逢いは最高に
エキサイティング!で、彼と出逢えて本当に良かったと涙が
出るシーンすらある。色々盛り込んであるワリにそつがない。
丁寧なのに長ったらしくない。音楽映画とも成り得る選曲の
素晴らしさなのに、ドラマとしての完成度がこれまた高い。
なんか金太郎飴みたいに揃いに揃った見事な切り口だった。
おそるべし、S・テイラー=ウッド^^;
長ったらしい感想になってしまったが、
ミミ役K・スコット・トーマス、
ジュリア役A=マリー・ダフの演技には脱帽!
(↑しかもこのヒト、タムナスさんの奥さんじゃん!!マジか)
ポールも可愛いし~(^^)vジョージはイケメンだし~(^^)v
役者も一人一人褒めあげていたらキリがないほど皆巧い。
ファンであろうとなかろうと、上映されていたらぜひ観るべしv
(今度はポールの伝記映画も観たいな。あ、まだ早いですか^^;)