ミレニアム2 火と戯れる女 : 映画評論・批評
2010年9月14日更新
2010年9月11日よりシネマライズほかにてロードショー
複雑に入り組んだ謎がひとつずつ解き明かされていくプロセスがスリリング
リスベットの非情なまでに強い精神力にあらためて惚れ直した。前作ではミレニアム誌の記者ミカエルの助手として事件の捜査にあたったリスベットだが、 今回は彼女自身が当事者、しかも殺人事件の容疑者にされてしまう。それでも彼女は冷静沈着。誰にも助けを求めず、鋭い頭脳と抜群の行動力で事件の核心に迫っていく。彼女は何故ここまでクールでいられるのか。過去に何があったのか。本作「ミレニアム2」と完結編の「ミレニアム3」でその全てが明らかになる。というのも、彼女の存在そのものが、権力を乱用した犯罪の根幹に深く関わっているからだ。
「ミレニアム」シリーズの魅力は、単なる事件の謎解きではなく、ある事件の捜査に関連してその背後に隠された巨大悪が浮かび上がる二重構造になっている点だ。今回も、ミレニアム誌の少女売春告発が、権力機構が関与する秘密組織を暴き出し、ひいてはリスベットの呪われた血の物語に続いていく。複雑に入り組んだ謎がひとつずつ解き明かされていくプロセスはゾクゾクするほどスリリングだ。強いアクションヒーローが主人公だったらこうはいかない。観察力に優れたジャーナリストと天才ハッカーという異色の組み合わせだからこそ成立する語り口だ。
「2」では絶体に諦めないリスベットのフィジカルな強さが、「3」では頭脳プレイが冴え渡る裁判シーンが際だっている。
(森山京子)