「痛快で爽やかなエンディング、そのカラクリに腹を抱える」ミックマック マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
痛快で爽やかなエンディング、そのカラクリに腹を抱える
冒頭、バジルがハンフリー・ボガード、ローレン・バコール共演「三つ数えろ」(1946)のビデオを観ていて、外の様子がおかしいことに気づき事件に巻き込まれる。その流れで、マックス・スタイナーばりの音楽と昔風のオープニング・クレジットが始まる凝りようで、一気にジャン=ピエール・ジュネの術中にはまる。
色彩や語り口が似ているからといって、単純に「アメリ」路線と言ってしまうのは作者が可哀想だ。むしろ、音楽の使い方も含めて独自のスタイルを確立しつつあると見るべきだろう。
ノスタルジックなアイテムが所狭しと積み上げられ、まさにおもちゃ箱をひっくり返したような廃品回収人たちの住みかは、年代を錯誤させる独特の味わいを持つ。
仲間になった7人の顔ぶれも現実離れして、人としてというよりアイテムの一部として溶け込んでいる。
本筋のバジルによる復讐劇だが、武器社会や戦争に対する批判を声高々に訴えるのではなく、軽妙にふたりの武器製造業者を懲らしめていく。
その手口は狡猾というより、古くさいスパイ映画や、チャップリンのドタバタを観るようで、ちょっと間の抜けた悪戯の連続技で滑稽だ。
向かい合ったマフィアのボス同士を罠にかける「ラッキーナンバー7」(2006)と筋は似ているが、向こうが暴力的な結末だったのに対し、本作のエンディングは何とも痛快で爽やか。そのカラクリに腹を抱える。
コメントする