「信頼できない米国政府、対照的に数多くの米国民の正義感をマック・デイモン演ずる一兵士が担う」グリーン・ゾーン Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
信頼できない米国政府、対照的に数多くの米国民の正義感をマック・デイモン演ずる一兵士が担う
ポール・グリーングラス監督(ユナイテッド93等)による2010年製作のアメリカ映画
原題:Green Zone、配給:東宝東和
イラク戦争において、政府高官がイラクに大量破壊兵器が無いことをイラク政府要人から聞いていたのに、そのことを隠蔽し、フセイン追放や傀儡政権の樹立を目指して画策するストーリー。しかも口を防ぐ目的で、そのイラク要人の殺害指示を出す。言わば、米国政府を思いっきり悪玉扱いする内容で、かなり驚かされた。
大量破壊兵器捜索の極秘任務で動く米軍将校を演じたマット・デイモンは好演。任務遂行 のための部下への矢継ぎばなの指示や迅速な行動がいかにも有能な司令官で、現場指揮官からの情報入手が的確なのか、演技にリアリティも感じさせた。
グリーン・ゾーン(連合国暫定当局があったバグダード市内10km2にわたる安全地帯内部)でフセイン大統領が仕事を行なっていた建物にはプールがあり、そこには米国人の美女(駐在文官の妻・家族・恋人?)がいっぱいたむろしていて、破壊と戦闘で狂騒の外側と別世界の映像で、主人公と共に驚かされた。米国人たちここにかってに来て、一体何をしているのか?映像で痛烈な批判をしている様にも思えた。
エミリー・ライアン演じてたのは、ウォールストリート・ジャーナル紙の女性記者ローリー・デイン。政府高官にガセ記事を掴まされ、裏取りもなしに記事にしたトンデモ記者。ただイラク戦争での大誤報はニューヨーク・タイムズの記者ジュディス・ミラー。有名な話しであり新聞社名をライバル紙に変えたのは失礼ではないかとも思った。名誉既存的な問題は無いのだろうか?
イラク政府要人の情報を持ってきたイラク人でデイモンの通訳役を演じたハリド・アブダラ(エジプト系英国人俳優らしい)が好演。自分達の国のことはアメリカ人でなく自分達で決めたいという彼の言葉が突き刺さる。そしてその実行の一つとして、イラク政府要人は彼の手により射殺される。なかなか出来が良い脚本であるし、日本人の自分にも気持ちはよく分かるし、かなり刺さった。
ラストはかなりスカッとした終わり方で、とても気に入った。エミリー・ライアン記者も救われてるし、マット・デイモンが代表した数多くの米国民の正義感が、メールを送った多くのメディアに託され、その数が半端でなく大量で用意周到でもあり、実にカッコ良いと思った。
製作ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、ロイド・レビン、ポール・グリーングラス、製作総指揮デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン。
原作ラジーフ・チャンドラセカラン(ジャーナリスト)2006年の著書『インペリアル・ライフ・イン・ザ・エメラルド・シティ』、脚本ブライアン・ヘルゲランド(ロビン・フッド等)、撮影バリー・アクロイド、美術ドミニク・ワトキンス、編集クリストファー・ラウズ、音楽ジョン・パウエル。
出演は、マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、エイミー・ライアン、ハリド・アブダラ、ジェイソン・アイザックス。
Kazu Annさん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
こんなにも大胆に描かれている事に驚かされました。マット・ディモンの演技も素晴らしく、もっと評価されるべき作品ですよね。