復讐捜査線 : 映画評論・批評
2011年7月26日更新
2011年7月30日より新宿ミラノほかにてロードショー
復活のメルギブが豪快に突っ走る骨太サスペンスドラマ
いかにもB級イメージのタイトルなので、メル・ギブソン久々の主演作でなければ、危うく見逃すところだった。B級どころか、軍需産業に絡む政治権力の横暴を告発する骨太のドラマは一級品。オリジナルは英BBCが85年に製作したTVシリーズで、その脚本を手掛けたのが「ミニミニ大作戦」のトロイ・ケネディ・マーティンだったというのだから、面白さも納得。娘を殺された刑事が犯人を追及していくうちに巨悪を暴く結果になるサスペンスも極上だ。
ちょっぴり老けたメルギブは女っ気なしで父親役に徹し、その代わりと言うわけでもないだろうが、謎の殺し屋レイ・ウィンストンと、人生の終点が見えた中年男同士のクールな友情を見せてくれる。いつもは凶暴な役が多いウィンストンだが、今回は味なセリフを連発して男の心意気を見せる美味しい役。激高型のメルギブと対照的に静かな男を坦々と演じているのが見事だ。
惜しいのは、後半、悪いヤツらの攻撃がバタバタと荒っぽくなる点。本当は、じわじわとクビを締めて虚しさを感じさせる手口の方が権力の犯罪らしくて怖いのだが、ギャングもどきの派手な襲撃の連続になってしまった。ただし、今の日本人が心底怖いと思うリアルな攻撃も仕掛けられている。こういう殺し方もあるのかと、ゾッとした。
(森山京子)