「3つのバクチに勝った」マネーボール Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
3つのバクチに勝った
2011年公開のアメリカ映画。
マイケル・ルイスによるノンフィクション小説『マネー・ボール 』(原題:Moneyball: The Art of Winning An Unfair Game)を原作としている。
大リーグ(アメリカンリーグ)に所属する金欠球団オークランド・アスレチックスを題材にした下剋上スポーツドラマ。
実話をもとにしている。
監督:ベネット・ミラー
脚本:スティーヴン・ザイリアン、アーロン・ソーキン
【球団社長ビリー・ビーン】:ブラッド・ピット
【ビリーの片腕ピーター・ブランド】:ジョナ・ヒル
【アート・ハウ監督】:フィリップ・シーモア・ホフマン
野球ファン必見の1本。
脚本がとてもよく出来ている。
「セイバーメトリクス(≒ 統計学的見地から選手を評価する手法)」について詳しく作中で語られるわけではない。
せいぜい「◯某選手は出塁率が高い」程度までだ。
娯楽作品としては、十分だ。
大谷翔平のおかげで、大リーグ中継の機会が増えた。
OPSだのWHIPだの、見慣れない指標が画面に出る。
アメリカ人はデータが大好きだ。
ある指標と、得点や勝敗の因果関係を探っていく。
今は亡き野村克也さんが提唱した「ID野球」は、セイバーメトリクスとは違う。
ノムさんのは、状況ごとの心理的傾向値やあるファクトの発生頻度、
別の視点では言葉の定義に重きを置き、「シンキングベースボール」、プレイヤーに対して「考えてプレイしようぜ」というものだ。
セイバーメトリクスは、選手の特性を決定づける指標を定義し、それと勝利との有為な結びつきを仮説立てていて、プレイヤーというよりフロント、マネージャー(監督)が対象だ。
象徴的に語られるのは、「アウトにならなきゃ負けない」、つまり、「バントは愚策」とする考え方だろう。
本作はバクチをうった。
原作がそうだから、とは思わない。
映画は創作できる。
本作もいくつか、事実と異なる部分がある。
球団社長(フロント)という裏方を主役にするというバクチ。
◆ブラピを配役してクリア。
セイバーメトリクスという専門的かつめんどくさい概念を映画に持ち込むバクチ。
◆見た目にもスポーツと縁のない、野球経験ゼロのインテリ君をセイバーメトリクスの象徴として際立たせてクリア。
実話とは言え、当時、スターもおらず知名度のないアスレチックスをメインにせざるを得ない博打。
◆幾人かの選手にスポットをあて、観客に感情移入させることでクリア。
大したものだと思う。
アクションが主戦場のブラピを、よく主役に据えた。
アカデミー賞6部門でノミネートされたのが本作の出来を表している。
野球好きは必見と言い切れるので、☆5.0