「新理論も今やふつう」マネーボール KGRさんの映画レビュー(感想・評価)
新理論も今やふつう
弱小貧乏軍団を独自の理論によって強化、常勝軍団へと変えていった、というと、何かスポ根もののように聞こえるがそうではない。
言わば経営指標に基づく経営哲学の実践編みたいなもので、仕事に専心しながらも仕事と家庭の狭間で苦悩するGMの姿が見て取れる。
セイバーメトリクス理論はこの時急に生まれたものではなく、1980年代から世に知られていたそうだ。
一部の愛好家には人気があったものの、球団経営には生かされなかった。
1983年ビリー・ビーンの前のGMであるアルダーソンがマイナーから適用し始め、1990年代半ばに球団経営が苦しくなってからはメジャーでも使うようになり、現場との対立が激しくなった。
1997年、GMとなったビリー・ビーンはこの施策を推し進め、実際には徐々に効果を発揮したということで、2001年から2002年に急に強くなったわけではない。
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従来指標では「不当に低く(安く)評価されている」選手がいるわけで、その分安い年俸で得点能力の高いチーム編成ができる。
「新しい指標」はパラダイムシフトでも特許でも何でもなく、評価基準が変わるだけで、各チームが評価の指標を同じように変えてくれば、また同じベースになり、金持ちが有利になるのは自明。
事実、アスレチックスは2001年、2002年、2003年と続けてプレーオフに進出したが、地区シリーズで敗退。
2004年、2005年はプレーオフ進出ならず。
2006年はリーグチャンピオンシリーズで完敗し、その後は低迷。
映画に出てきた連勝記録は感動的だが「新」理論は普遍的なものとなり、GMのいう優勝は遠い夢。
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