「データ(過去)ではなく、データの奥の可能性(未来)を信じる」マネーボール 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
データ(過去)ではなく、データの奥の可能性(未来)を信じる
いやー最近、ブラピ出演作がハズレだった記憶が無いです。
今回も良い映画でした。
マネーボール理論とは、いわゆるひとつのデータ野球だそうで。
必要な勝利数から必要な得失点を計算、
各選手の統計データを取り、打率や出塁率を見て必要な選手を抽出……
うぐう、なんか小難しい。
まあ野球にも統計学にも詳しくなくても大丈夫。
まずは出ている役者さん皆が堅実で良い演技。
ブラピもジョナ・ヒルも◎だが、特に印象的だったのはフィリップ・シーモア・ホフマン。
同監督作『カポーティ』の時とはまるで別人!
インテリな役だけでなく、こんな頭の固そうな役もイケるとはね。
(出番少ないのが残念)
更に印象的だったのは主人公の娘役ケリス・ドーシー。
他のレビュアーさんと同じく、あの歌声にやられた。
話を本筋に移そう。
チームを優勝させるべく主人公ビリーが駆使したのは統計データだったが、
結局、一番重要なのはデータではなかった。
どうやって人を勇気付け、100%の力を引き出すか?
それには統計データ以上に揺るぎない信念が必要だった訳で、
それは人から見限られる悔しさを誰より知り、
見放された選手の持つ可能性を誰より信じる、
ビリーならではの信念だった。
「自覚は無いだろうが、君らは優勝チームなんだ」
選手と人間的な接触を避けていたビリーが
選手と向き合い始めてから、チームは変わる。
実話というのが信じられない程の連勝に次ぐ連勝。
そして、あの一打。
引き出された選手の実力が、遂にデータ(過去)を凌駕したあの一打!!
全身が鳥肌立つような感動だった。
こっちまで拳を振り上げたくなるほどに熱いシーンだった。
……マネーボール理論は是か非か。
データとか統計とかいうヤツは非人間的な臭いがしてどうも苦手だが、
結局そんなものは単なるツールだ。大事なのはそれをどう使うかだ。
端的に言えば、ビリーも敵対する他のGMも、やっている事は同じだった。
どちらも自分のやり方で、選手達の持つ可能性を信じていた。
マネーボール理論は選手の持つ可能性を拡げる“視点”が
ひとつ増えたのだと歓迎すれば良いんじゃないかしら。
濁った泥溜まりも、視点を変えれば青空が見えてくる。
色々な方向から見れば、どんな人間にだって可能性はあるんよ。
一度は見放された人間にも、今は落ちぶれてる人間にも。
これは、万人に勇気を与えてくれる映画。
<2011/11/13鑑賞>