劇場公開日 2011年11月11日

  • 予告編を見る

「ビジネスマネージャーにとってのケースブック」マネーボール h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ビジネスマネージャーにとってのケースブック

2020年7月30日
iPhoneアプリから投稿

映画の内容自体よくできているので、それだけでも十分に楽しめる。メジャーリーグ好きだったり、ブラピ好きならなおさらだ。

しかし、この作品はビジネスパーソンにとってビジネスケースとして観られてこその価値がある。ヘタなMBA本より、よっぽど学ぶべき点がある。

1)ファイナンス
選手のvaluationは、今までの実績(今でもベテラン選手ほど高額年俸の傾向は変わらず)ではなく、これからどれだけアウトプットを出せるかで算出されるべき。スカウトやトレードも、企業のM&Aと同じで、「安く買って、高値で売る」原則を外してはいけない。もちろん、選手を買うときは、valuationだけではなく、組織の戦術に合致しているか、シナジーを生み出せそうか、を検証する必要がある。

2)管理会計
選手を評価する指標は、選手だけではコントロールできない「結果指標(KGI)」で縛るのではなく、選手個人でコントロール(目標管理)できる「プロセス指標(KPI)」で評価すべきである。
そのKPI設定は、組織のミッションやKGIを達成するための、公平で具体的かつプロセスが可視化できる指標設定を行う。

3)有事の組織マネジメント
組織のミッションを達成するためには「誰をバスに乗せるか」を問い続けなくてはいけない。必要に応じて非情な意思決定をおこなわなくてはいけない。
リーダー自身と組織の人間が、各人の進退と組織の存続をかけてどこまで本気になれるか、を共有するためのコミュニケーションも大事。

業績が順調でリソース(財務面、人材面)が潤沢な組織においては、そこまで厳格な運用は必要ないかもしれない。
しかし弱小組織は、リスク(不確実性)をとらなければ、常勝軍団には永遠に勝てない。
徹底して課題を掘り起こし(What’s the problem ?)、業界の常識を疑い、競合とは違う戦略を実行できるか、本作には制約下でたたかうヒントがつまっている。

データ信奉者のBillyが、非科学的なジンクスを信じていて、自身のvaluationには興味を持っていないのが御愛敬。

atsushi