「メカは迫力満点だが、人物は惜しい」プランゼット KGRさんの映画レビュー(感想・評価)
メカは迫力満点だが、人物は惜しい
粟津順監督、宮野真守、石原夏織、フルCGアニメーション
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2053年、突如地球に近づいてきた小惑星は宇宙人の基地、
まるでスター・ウォーズのデススターのようなものから排出された円盤が
地球に飛来して攻撃、人類は人口の大半を失い、一部は火星に避難した。
地球人は、このデススター・ライクな基地を持つ宇宙人をFOSと呼び、
攻撃を仕掛けるが、あらゆる攻撃は失敗に終わり、
わずかに残された兵士たちがシールドに覆われた地球を守っていた。
日本方面軍富士基地の兵士(パイロット)はわずかに3名。
田崎剣大尉(声:津田健次郎)、明島大志(声:宮野真守)、佐河佳織(声:寺崎裕香)
ある日、ロシア方面隊がFOSによって壊滅させられ、
基地司令の吉澤ユウラ少佐(声:竹内順子)は、
現在かろうじてFOSからの攻撃を守っているシールドのパワーを使って
FOSの本拠(これがいわゆるデススター)を破壊する作戦に出た。
それがプランゼットである。
田崎、明島、佐河はモビルスーツに乗り込み、敵を迎え撃つ。
果たして、プランゼットは成功するだろうか、
明島ら防衛軍の兵士の運命は、そして、こよみは、、
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未来の話なのに時代がかった家電品(例えばエアコン、TV)が出てくるのは
粟津監督の得意技らしい。
私は宇宙人の攻撃でデジタルな機器が使えなくなり、
家電品もアナログなものばかりになったのかと思っていた。
予算の都合か、あえてそうしているのかはわからないが登場人物が少なすぎ。
基地には兵士と司令以外誰もいないし、街中にもこよみ以外の人物は描かれない。
表現力は素晴らしい。
人物の表現もメカのリアル感もなかなかのものだ。
しかし、設定には無理が多い。
また、いくら細かくばらばらになったとはいえ、
種々の保存則(質量、運動量、エネルギーなどの保存則)から言って、
被害が仮に地表付近にとどまったとしても、地球が壊滅的打撃を受けることは間違いない。
あれはもう少し遠い宇宙空間で対応してもらいたかった。
最終作戦の割には、関係者の姿もよく見えないし、個人プレー的な気がする。
また地球全体がシールドで保護されているのに、
どうやって火星に行くロケットがシールドを回避できるのか、
宇宙空間に出た途端、FOSに攻撃されないのか、火星はなぜ安全なのか、
なども疑問が募る。
地球外知的生命体といわれるものの行動が我々の理解を超越していても別に問題ないが、
そもそも「知的生命体」なのかどうかもよくわからない。
とはいえ、そういう「細かい」ことは無視して、
メカ対メカのCG版特撮を楽しむ分には面白い映画だった。
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日本のCGアニメについてはいろいろなご意見があるが、
その一つに髪の表現が安っぽいというのがある。
本作では髪は少なくとも見た目は1本1本丁寧に描かれ、
こよみの髪はバラバラにそよぐし、頭を傾ければ傾ぐし、
その他の人物の髪も不自然さはなかった。
多分予算的にもあまり潤沢でないだろう本作で、
髪の表現がここまでできるということは、他のアニメでもできるはずで、
いろいろな事情があってわざとやっていないものと思われる。
また、皮膚の質感や金属などの質感もよく表現されていて、
その部分では実写と見紛うばかり、といって良いかもしれない。
ただ、いただけないのは人物の目と口。
目はどこを見ているのかよくわからないことが多かった。
すぐ目の前の人間と議論を交わしているはずなのに、どこか遠くを見ているような、
あるいはうつろな目に見える。
目線がどこを向いているのかわからないと言ったらいいのかもしれない。
また、口はどうにも口パクに見えてしょうがない。
ただし、TVアニメなどでよくある輪郭固定で口だけパクパク、
何をしゃべっても同じ調子でパクパクというのとは一線を画す。
台詞に合わせて口の形も変えてはいるのだが、なぜか声を出していないように見える。
喋っているように見えるにはもう一つ何か、口以外の顔の部分の動きが必要なのだろうか。
何がどうあればいいのかはよくわからない。
本物に似ていれば似ているほど、細かな違和感がより強調されるというから、
逆によくできているのかもしれない。
ただ繰り返すが、TVアニメなどでよくある、言葉=台詞の内容に関わらず、
ただ単に口を開け閉めする顔とは比べ物にならない。
その点では、格段の出来であることは間違いない。