「I am not your father. ダフト・パンクはデジタル世界でも大人気。」トロン:レガシー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
I am not your father. ダフト・パンクはデジタル世界でも大人気。
コンピューター内に広がる電子世界での冒険を描いたSFアクション『トロン』シリーズの第2作。
前作の7年後にあたる1989年、ケヴィン・フリンは一人息子のサムを残し消息不明になってしまう。
それからさらに20年後、父の手掛かりを求めてゲームセンター「FLYNN'S」を訪ねたサムは、転移装置によって見知らぬ世界へと飛ばされてしまう。そこは父から寝物語として聞かされていたコンピューターの中の世界”グリッド”だった…。
ケヴィンと行動を共にする謎の女、クオラを演じるのは『ガール・ネクスト・ドア』『スリーデイズ』のオリヴィア・ワイルド。
前作の公開から実に28年、あの『トロン』が帰ってきた!!…まぁ、ぶっちゃけあの映画の続編を待ち望んでいた人間が居たのかどうか甚だ疑問ではあるんだけど。
この企画誰得!?…なんて思っていたが、興行収入は4億ドル以上とまあまあな数字。その後スピンオフのテレビアニメも制作されているし、シリーズ3作目も公開が決定している。自分が思っている以上に『トロン』シリーズって人気があるのかも知れない。
監督は後に超大ヒット作『トップガン マーヴェリック』(2022)を作る事になる男、ジョセフ・コシンスキー。本作は彼の長編デビュー作でもある。
大の『スター・ウォーズ』ファンである映画ライターの高橋ヨシキさんは、”『トップガン マーヴェリック』はどこに出しても恥ずかしくない立派な『SW』”と発言していたが、どうやらコシンスキー監督の『SW』愛は本物であるようだ。だって年老いたケヴィンの姿、どう見てもジェダイなんだもん!挙げ句の果てにはライトセーバーみたいな武器まで出てくるし…。いやぁ、やっぱみんな『スター・ウォーズ』が大好きなんすねぇ。
『SW』っぽさには目を瞑るとしても、本作の衣装や街並みはめちゃくちゃ既視感がある。
とにかく、何から何までダフト・パンク。キラキラしててピカピカしててみんなフルフェイスのヘルメット被ってる。劇伴もピコピコしていてとにかくダフト・パンク味に溢れている。更にはダフト・パンクっぽいDJまで登場していて、ここにはさすがに笑ったんだけど、スタッフロールを見て驚いた。いやこの映画ダフト・パンクが劇伴を担当してんのかいっ!∑(゚Д゚)あのDJも本人だったんかいっ!!∑(゚Д゚)
という訳で、この映画を観て分かることは2つ。
①コシンスキー監督は『スター・ウォーズ』が好き。
②コシンスキー監督はダフト・パンクが好き。
えー、これ以外のことは正直言ってよくわかりません。ストーリーはぼんやりしていてよくわからんし、世界観もよくわからん。もっといえば面白いのかつまらないのかも正直よくわからなかったです。つまんなくはないんだけど、だからといって面白さは全く感じなかった。何の味もしないんだけど、エンディングはなんか感動的だったような…?うーん、わからん!
そもそも、前作のストーリーとか全然覚えてないんですよね。奇抜でドラッギーな世界観に気を取られてしまい、物語にまで意識が回らない。前作のストーリーを事細かに覚えている人マジで0人説、あると思います。
それにも拘らず、本作は割とガッツリ前作の続き。設定とかルールとか、そういうことの説明が全くなされないまま主人公共々観客もグリッドに放り込まれてしまうため、正直お話についていけなかった。ケヴィンは何のためにこんな世界を作ったの?MCPが支配していた前の電子世界はどうなったの?うーん、わからん!
ストーリーは薄味だが、アクション面の面白さも薄い。確かにディスクバトルやライトサイクルによるチェイスはなかなか見応えがあるのだが、そこが物語とあまり上手く接続出来ていなかったように思う。
ルックもありきたりっちゃありきたり。「こんなん見た事ねー!!」という驚きは前作の方がはるかに強い。良くも悪くも、普通のSFアクション映画になってしまったな、というのがストレートな印象である。
”CGを用いた世界初の映画”というのが前作の触れ込みだった訳だが、本作にも最先端の技術は投入されている。ジェフ・ブリッジスの顔をCGを用いて若返らせ、前作当時の見た目に可能な限り近づけているのだ。
『ジェミニマン』(2019)や『キャプテン・マーベル』(2019)、『アイリッシュマン』(2019)など、今ではCGを使って俳優の顔を若返らせるのは当たり前の事になりつつあるが、本作が公開された2010年ではまだそんな事をする作品は少なかったはず。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)くらいしか無かったんじゃないかしら?
そんな当時の最新技術が用いられた若ジェフ・ブリッジスの顔はというと…なんかツルッとしてる😅
流石に今見るとCGっぽさを強く感じるが、当時の技術力を考えればこの到達点は誇ってよいものだと思う。若ブリッジスとジジブリッジスが並び立つところなんてなかなかビザールな映像で面白かったし、この若返りは良かったんじゃないですか。
ただ、このCG加工は技術的にも予算的にもジェフ・ブリッジス1人分が限界だったのでしょう。前作の主人公、トロンの顔は全く映りません💦
…いや、おかしいだろっ!!何で最後の最後までヘルメット被ってんだよ!!せめてラストカットくらいはヘルメットが取れて、前作当時のまんまの若いブルース・ボックスライトナーの顔がベンッと画面に大写しになるべきでしょうに。タイトルになっているのにも拘らず完全に脇役だというのはこれ如何に?
と、グダグダ文句を言ってきたが、なんか良い話風に終わったし、ラストシーンの日の出は綺麗だったし、何となく良い映画を観たような気にはなれた。終わりよければ全て良し。
あとヒロインが凄え可愛い💕今や映画監督として有名になったオリヴィア・ワイルド、彼女のコケティッシュな雰囲気がたまりません♪クオラというキャラクターを生み出した、それだけでこの映画合格です😄
個人的に今最も期待している監督、ジョセフ・コシンスキー。彼の最新作『F1』(2025年公開予定)はどうやらモータースポーツを扱った作品らしいのですが、何と主役がブラッド・ピット!トム・クルーズに続いてブラピと仕事をするとは、マジで今1番勢いがある監督でしょこの人!
これでコシンスキー監督の映画はコンプリートしたのだが、彼のフィルモグラフィーには「SF」か「男のドラマ」かの2種類しかないことが判明。
SFは『トロン:レガシー』、『オブリビオン』(2013)、『スパイダーヘッド』(2022)とヘナチョコな映画しか撮っていないが、男のドラマでは『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017)、『トップガン マーヴェリック』とハズレなし!
次回作『F1』はおそらく男のドラマ映画のはず。つまり、名作になるのはもう決定しているようなものなのです!今から公開が楽しみだーー✨