トロン:レガシー : 映画評論・批評
2010年12月14日更新
2010年12月17日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
より進化した3Dで、ゲームの世界に入り込んだような感覚を体感できる快作
美意識に貫かれた斬新な映像と、見やすさも効果もより進化した3Dで、ゲームの世界に入り込んだような感覚を体感できる快作。プログラムが人の姿をして行動しているコンピューターの世界が舞台だが、独裁者クルーが君臨し、まさにゲームのよう。世界の成り立ちには深入りせず、いかにもゲーム的な展開で最後まで一気に疾走するのだ。
太陽はなく、青白い光を基調としたライトで建造物もメカも浮かび上がるコンピューターの世界のデザインが素晴らしい。たとえば、透明なシリコン素材で築かれたゲーム・グリッド(闘技場)。カメラの位置や角度が変わると複雑な構造が3Dで浮かび上がり、ライト・サイクル(バイク)でのバトルはじつにスリリング。プログラムが傷つくとガラスが割れたように体が砕けるが、3Dにおける破片の質感と飛沫感のリアルさに息を呑む。
その一方、無気物ばかりの世界で、本など有機物もある創造主ケビンの隠れ家は「2001年宇宙の旅」の白い部屋を連想させ、生命を感じさせる。謎の女戦士クオラは、「ブレードランナー」のレプリカントたちをイメージさせ、暗に他のプログラムとの違いを示す。そして終盤の空中戦以後は「スター・ウォーズ」を喚起させ、楽しい隠し味となっている。CGで描かれた若きジェフ・ブリッジス(クルー)と、現在のジェフ・ブリッジス(ケビン)の自然な共演も驚き。現実の世界を無理に絡ませてはいないので、科学性は気にせず、新感覚の映画を楽しんでほしい。
(山口直樹)