劇場公開日 2010年9月25日

おにいちゃんのハナビ : 映画評論・批評

2010年9月14日更新

2010年9月25日より有楽町スバル座ほかにてロードショー

兄妹が交わした他愛のない会話や時間の流れを愚直に描く

白血病で治療中の妹が自宅療養を許され、家に引き蘢っている兄を何とか外に連れ出そうと策を練る。化学療法の副作用で毛髪が抜け落ちた頭にカツラを被り、買い物に連れ出したり、新聞配達のアルバイトまで見つけて来る。自分の健康を優先した両親が兄を強引に東京から新潟に転校させたことに引き蘢りの原因があると感じているのか、妹の熱意は時に過剰気味である。見え透いた感じさえする。しかし、妹が病院から帰宅してから、やがて、再入院して短い人生を閉じるまでの数カ月間、映画は演出上便利な省略や誇張に頼らず、ただひたすら、兄妹が交わした他愛のない会話や時間の流れを愚直に描くことで、徐々に観客の共感を手に入れて行く。

新潟県小千谷市、片貝町で400年来続いている、町民参加の花火大会で実際にあったエピゾードが物語のベースになっているとか。毎年夏になると、片貝町の人々は各々の願い事を花火に託して神社に奉納するのだという。「おにいちゃんのハナビを上げて欲しい」そう言い残してこの世を去った妹のために、兄が夏の夜空に渾身の花火を打ち上げるシーンの清々しさは格別だ。漆黒の夜空に美しく花開き、やがて、はかなく消える光の花に過ぎ去った時間を重ね合わせ、心機一転、新たな人生に踏み出そうとする兄の決意が、年に一度の祭り事に対する日本人みんなの思いを代弁しているからかも知れない。

状況の変化に一喜一憂する両親の描き方はルーティンだし、兄が花火作りのために参加する青年会の反応もありきたりだが、兄妹を演じる高良健吾谷村美月が醸し出す実に自然でまろやかな空気が、心地よい余韻となってしばらく後を引く。故郷や、家族から離れて久しい都会人にお薦めしたい一作である。

清藤秀人

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