「どうにも甘めで薄味な印象」ウォール・ストリート 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
どうにも甘めで薄味な印象
前作を観たのは随分前なので
よく覚えてないが、株投資の知識があまり
無くても楽しんで観られた記憶がある。
あとはオープニングの
『FLY ME TO THE MOON』とか、
ラストの雨中の対決とか、
主人公があまり美味くなさそうな
寿司食べてる所とか。
ドでかい携帯電話から始まる
今回のオープニングも出色で、
主人公がバイクで街を走りながら
1億ドルの巨額取引の話をするあたり、
「今も昔も金融界は大忙しですねえ」
と呑気な感慨を抱くどころか、
恐ろしい額の金が恐ろしい速度で
取引される今の世の中にゾッとさせられる。
S・ラブーフ演じる主人公の設定も
少し珍しい。彼は「金になる」
ではなく「未来の為になる」と自分が
信じるものに投資する投資家。
善良な投資家なんてのがもしこの世に
いるなら、この主人公だろう。
彼も含め、全体を通して
「金ではなく心を大事に」
という明快なテーマが貫かれている
と感じた。
しかし……退屈な話では無いものの、
鑑賞後の印象はどうにも薄味。
ウォール街を舞台に復讐劇と
家族ドラマが同時進行する本作だが、
どっち付かずというか中途半端というか。
他のレビュアーさんも言う通り、主人公と
ゴードン・ゲッコーとその娘が
迎える結末もとって付けたような感じだ。
あのゲッコーが1億ドル返した!
って驚きはあるが、ああもアッサリ
“みんな仲良し”といくもんかなあ。
「金返せばいいってもんじゃないわよ!」
と娘にぶん殴られてもおかしくないと
思うけど。
主人公が狡猾な投資家ブレトンへの
復讐を目論むというパートに関しても、
けっきょく復讐らしい復讐ってゲッコー
から得た情報をリークしただけで、
本人はブレトンの下で文句言いながら
働いてただけだったような……。
それでも敵役ブレトンが迎える結末には
ザマァミヤガレな爽快感がある。
M・ムーアの『キャピタリズム』でも
描かれていたが、
いわゆるリーマンショックじゃ
ウォール街の投資家全てが酷い目に
遭った訳じゃないんですね。
それどころかブレトンのような一握りの
投資家共は、この未曾有の経済危機を
利用して更に莫大な金を手に入れた訳だ。
ただでさえ庶民の何百倍も儲けてるのに
まだ儲け足りないのかね。
頭おかしいんじゃねぇの?
と、大して貯金も無い僕は思う訳です。
以上!
金持ちへのヒガミで今回のレビュー終了!
<2011/2/20鑑賞>