「〜必見!オリバーストーンのニクい演出。この映画はあなたの資産になる。〜」ウォール・ストリート naopod54さんの映画レビュー(感想・評価)
〜必見!オリバーストーンのニクい演出。この映画はあなたの資産になる。〜
2008年9月のリーマンショックから早2年半、このタイミングでの「ウォール・ストリート」。前作から23年ぶりのパート2。収監されたかつてのウォール街の雄ゴードン・ゲッコーの8年の刑期が終えたところからストーリーは始まります。
23年前と言えば1988年。日本はまさにバブル絶頂期。ウォール街で描かれる浮かれた空気が当時の日本の浮かれポンチの空気と相まってパート1は日本でも空前のヒットとなり、チャーリーシーンはマドラスモデロのTVCFに出る訳であります。(ほんとか?)チャーリーシーンとマーチンシーンの実親子が親子役をやるという演出もさることながら、今も語り継がれるマイケルダグラス「Greed is Good.(強欲は善だ)」のうますぎるスピーチ、そしてセントラルパークでのバドとゴードンの最後の対決。オリバーストーンならではの見せ場の多い演出はまさに時代の空気をふんだんに盛り込んだ80年代の名作だった訳です。
そしてようやく景気も上向きかけ08年を振り返る余裕ができ始めたタイミングでゲッコー復活ってわけでございます。結論から言いますが、必見です。ぜひとも皆様にも楽しんでいただきたいためあまり多くを語りたくありませんが見所を何点かあげておきます。
①パート1を意識したオープニング、音楽とタイポグラフィ。前作を見た人は随所に80年代を敢えて取り込む監督のニクい演出を感じます。
②脇役陣の充実と、カメオ出演のサプライズ。これはこれ以上申しません。
③主演のシャイア・ラブーフとキャリー・マリガンの熱演。そして言わずと知れたマイケル・ダグラスの名演説再び。キャリー・マリガンは美人じゃないんですが、何とも言えないキュートな雰囲気。21世紀のオードリーヘプバーンと言われているようです。が、それは言い過ぎか。シャイア・ラブーフは線が細いながら,確かな演技力と独特の美男顔でこれからも色のつかない重宝される役者になっていくでしょう。
④そして08年の金融業界当事者達がほぼ実際の人物とかぶる形で出演し、当時の舞台裏、現場で何が起きていたのかをヴァーチャルに体験できる。
結局、金融っていうのは金融工学とかMBAとかデジタルに割り切れそうなナレッジで語るものではなく、人間そのものなんだということに改めて気づかされます。まさに持って生まれた人間性がもろに出る仕事、業界、それが金融って言う仕事であり,業界なんではないかと。また、因果応報、カルマという言葉も浮かんできます。一見、海千山千の兵達がだましだまされ野ゲームに興じている風ですが、最終的には因果応報、落ちるべく所に結果が落ち着くということも映画では示唆されていると感じました。やはり大事なのは、人としての在り方だと。
ウォール・ストリート。ひょっとしたらパート1の時代を知らない若いみなさんには強い思い入れを持てないかもしれませんが、ウォール街という題材を用いながら結局は人間そのものを描いていると見れば、必ずやこの映画、あなたの資産になります。