「描画、世界観は超一級!しかし、物語は…」借りぐらしのアリエッティ アリエッティさんの映画レビュー(感想・評価)
描画、世界観は超一級!しかし、物語は…
*ネタバレ有り*
鑑賞前の方は、ご承知おきの上、お読み下さい。
全体的な世界観、描写力はさすがで、引き込まれます。 ぐいぐいとアリエッティの世界に引き込まれました。
しかし、せっかく引き込まれたのに、度々現実に引き戻されます。 それは…
1 おはるさんというお手伝いさんの毒が強すぎる。 可愛げのない、ただの陰険なおばあさんとして描かれていて、人間の嫌な部分を見せられる。
普段、そういう人間を見る機会の多いこの現実世界から、せっかく離れる事が出来ると思ったのに、映画の世界にまで、人間の嫌らしさを見せられると正直辟易してくる。
意地悪でもいいが、他の側面も描いて欲しかった。 意地悪でも可愛い、どこか憎めない、せめてそんな感じにして欲しかったな~
2 猫、カラス、の描写が、しつこい。 自然、動物はそんなに甘くない、という感じはわかりますが、ちょっとオーバーです。 実際のカラス、猫もあんなに執着しませんので
3 物語が平板で、盛り上がりに欠ける。 肝心の、主人公アリエッティと、少年の交流が深まらないまま時が過ぎ、あれ?もうそろそろ映画終わる時間なんだけど、まさかこれで終わり?と思ったら、本当にそのまま終わってしまいました。
交流に深みがなかったので、ラストもあっさりしたものにしか感じられず、感情移入は出来ませんでした。 まあ物語の展開からしてこんなもんだろうという感じです。
あと一つ二つ、離れたくはないけれど、別れなければならない。お互いにそれをわかって、相手を思って別れを告げるエピソードが欲しかった。
4 説教臭い
人間の嫌な部分が、綺麗で繊細な部分を滅亡させようとしている。 それに対して抵抗するが無力な人間。結局小人は出て行ってしまい、人間と小人は相容れない。
ただ、今の現実をこうなんだ! と見せられているだけで、効果的な解決策や、希望や理想がその先に見えない。 これが現実だと言わんばかりに感じる。
確かにそうなんだが、せめて希望や、解決策、理想を最後に見せて欲しかった。 じゃあどうしたらいいんですか? こうなるのが理想なんですよ!という部分監督の理想のビジョンを見せて欲しかった。
小人を滅びゆく種族とのたまう冷めた病弱少年、その小人を泥棒小人として捕獲しようとするお手伝いさん、ぎゃーぎゃー騒ぐばかりで、現実世界にそのままいるであろう感じのアリエッティのお母さん。 どれをとっても、理想が感じられません。 ありのままの現実を見せられている感じです。
5 ストーリーは、希望や爽快感や夢や理想や充足感やワクワク感が感じられず、期待を持たせる場面はあっても、そうはならず、淡々と進んで行きます。 きて良かったな~という充足感が足りません。
何代も見つからずにいたと言ってはいるものの、あっさり見つかってしまうアリエッティや、彼女の住む家や母親も、「えっ、本当に何代も見つからなかったの??」と感じてしまいました。
正直、主人公含め、どのキャラクターにも入り込めず感情移入が出来ません。 映画に入り込んで、キャラクターになりきりたくてもそうさせてくれません。
感情移入できる程、それぞれのキャラクターの背景や性格、感情、思いが掘り下げられていないのです。 これは致命的でした。
ですので終わるまで、結局、見る私達は、部外者として眺めている感覚です。 映画の中の主人公になりきって人生を楽しめないのです。 すべて他人事に感じてしまうのです。
6 と、つらつらと不満を描きましたが、この不満も期待していたが故です。 実際、世界観と綺麗な描画を見るだけでも価値があると思います。
7 正直、ストーリーは心にまったく残りませんが、映像世界は堪能できるはずです! 一見の価値有りです!!
では~