春との旅のレビュー・感想・評価
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自分をふり返る旅。
どうなんだろう、この作品^^;
私にはこれから老いていく全ての人々へ
「いいですか、こんな老人になってはいけませんよ!」
というメッセージなのか?とも思えたけど。
私的に分析すれば、自分の生い立ちや両親との関係、
さらには祖父母とどのような関係を築いてきたかで
話への関心具合が変わってくる作品のように思えた。
おそらく誰にでもこの爺さんのような時がくる。
しかしこの爺さんには孫がいて、自分の世話を
してもらっていたのだから、まだかなりいい方だ。
これから先の未来、こんな風に家族が世話をできる
環境の家がどれだけ残るんだろう。と思ったほどだ。
唐突に始まる冒頭場面。怒り心頭、といった面持ちで
あばら家から飛び出してくる爺さん。杖を放り投げ、
足を引き摺って歩く爺さんを必死の形相で止める孫。
何これ…?と旅の始まりがまったく分からない^^;
行きつ戻りつ進みながら、やっと辿り着く最初の家。
どうやらこの爺さんと孫は、兄弟宅を訪ね歩いては
爺さんの今後の世話を頼みに来たようだ。そもそもは
孫が働いていた小学校が廃校になり、孫が上京して
家を出るから、といった話に起因するようだ。
やーっと分かったぞ。と思ったら、もう次の二軒目だ。
すでにこの時点で、こんな爺さんを受け入れる家族は
誰もいないだろう、とこちら側も推測できる^^;
我儘を推し通して生きてきたんであろうこの爺さんは、
人生全てに見通しが甘く、常に誰かの世話になって
どうにかしてもらおうという魂胆が見え見えなのだ(爆)
もちろんこうなるのはこの爺さんだけのせいではない。
それを受け入れてきた家族、兄弟、孫の責任でもある。
どうせこんな旅を続けたところで、誰も快く了承など
するはずもない。多分この爺さんはそれを承知の上で
この旅に出たんだろう。そして孫はこの爺さんをひとり
にはできないと悟り、引き返そうとする。さて…。
冒頭からラストまで、仲代達矢を観る為の作品である。
偏屈~頑固~食い意地~甘ったれ~イジケ虫~ありと
あらゆる表情と動きを素晴らしいまでに彼は魅せる^^;
兄弟ごとの甘え具合も絶妙(爆)特に姉役の淡島千景を
慕って愚痴をこぼすところなど、転じて笑えるほど巧い。
その姉が孫と弟の将来を案じてビシッと決める言葉が
素晴らしい。当たり前のことなんだけど^^;そうなのだ。
決して憎くて突き放すのではない。本当は弟が可愛くて
仕方ないという姉の表情を見事に決めるところもさすが。
他の役者も皆巧いため、演技に対する云々は全くない。
ただ。
どうしても気になったのが孫役の徳永えりの歩き方。
あれはワザと?なんだろうか。今時の女の子があんな
ガニ股でバタバタ歩くんだろうか。どうにもおかしい。
あの子が動く度に違和感が生じ、集中できなかった^^;
どうなんですかね、監督。
必ず訪れる老いや転機を題材にしたいい話なのだが、
全ての世代の共感を呼ぶにはおそらく難しい作品。
(ところで仙台って学会が多いんですか?困ったなぁ^^;)
人生とはつらいものですね。
豪華キャストで描く家族ドラマ。
北海道の元漁師である忠男は、孫娘の春と共に、ある日突然、家を捨てて旅に出る。
旅の目的は住む家を求めて、親戚縁者を訪ね歩く旅。ただ家族との過去の確執から助けてくれる兄弟はおらず、忠男は自分の人生を見つめ直すことになる。
その中で、自分が如何に自分勝手に生き他人に迷惑をかけてきたか、今も孫娘におんぶに抱っこであることを、足が不自由でつい甘えてしまう自分の姿に情けなさを感じつつも何も出来ない惨めさに苦しみながら旅を続ける。
春も忠生という重い荷物を背負っているという実感から、つい発してしまった一言がこの旅の始まりとなってしまったが、自分にとって忠男(家族)が如何に大切な存在であるかを旅の中で再認識する。
人生は常に厳しいものであることや、人生とは何か?考えさせられる作品。
また家族と老後の付き合い方にも問題提起しているのでは?
人は人に寄り添って生きていく。
良いときも、悪いときもー。
春との旅 -
忠男の孫娘、春のなにげない一言が、思いがけずも忠男にひとつの決断をさせることになる。
そして、春との旅ははじまってゆく。会うことも久しい、親戚たちを巡る旅。
忠男にとって、春との旅は、自分自身へのけじめを付ける旅だったのだろう。
一方、春にとっては、なにげない一言で忠夫を思い詰めさせてしまった罪悪感をぬぐえないまま、戸惑いつつも忠男に寄り添い旅を続けてゆく。そして春自身にとっても、いつしかそれは自分自身へのけじめを付ける旅になっていく。
老いた男にとっても、人生これからの孫娘にとっても、自分自身が次のステップに”成長”していく上で、お互いそれぞれにとって大切な旅に違いなかったであろう。厳しいのであるが、それはまた致し方ないことなのだ。それが人生なのだから。
人生の終演をどうやって迎えられるのか?送り出してあげられるのか?という家族にとっては厳しくとも避けられないテーマについて、丁寧に掘り下げられた良作だと思う。偏屈で頑固な老漁師を演じる仲代達也さんの迫力満載の演技や、取り巻く実力派役者さん達の演技もさることながら、孫娘、春を演じる徳永えりさんの感情のこもった熱演が秀逸!!後半にかけてのクライマックスは前半の抑揚をさらに増幅させるかのような感覚で、親の立場・子供の立場、いろんな立場で感情移入できるステキな映画ではないかと思う。
精一杯の愛情で「づっとそばにいるからね」という、春の心境を察すると、あまりにも切なくなってしまう。でも、そうやって経験して人は強くなっていくのだ。
老人たちが主役だが、若い人たちが見るべき作品
この作品で何回も出てくるのが、寒いのにもかかわらず外気を入れるために窓を開ける、という演出だ。締め切った部屋の窓を開けるのは、空気を入れ替える、風通しを良くする、との意味でするものだが、それは、この作品のテーマであり、一番の見どころを表現している。
北海道のさびれた港町から、孫の春が失職したために、一緒に暮らしていた祖父の忠男は自分の老い先の面倒をみてくれるところを求めて、春といっしょに兄弟の家を訪れていく、というこの作品の物語は、筋だけ追っていくとよくあるロードムービーという印象を受ける。しかし、内容は「人生の孤独」を見据えた深みのある人間描写がいくつも演出されていて、観る者に深い感動をもたらしてくれる。その導入部の意味で、窓を開ける演出が何回も出てくる。
歩くことも辛いほど身体がいうことをきかない祖父の忠男に、懸命につきそう、ようやく二十歳になる若い孫娘の春の姿は、とても健気に見える。しかし、春は自分のために都会に出て働きたいとの思いから、忠男から離れようとしている。しかし、両親がいなくなってしまった春にとっては「人生の孤独」への一歩へとなる怖さがある。
一方の忠男は、ニシンを求めて家を出て行き、兄弟とは疎遠となり、そして娘や孫にも捨てられようとする「孤独な人生」を歩んできた。その二人の旅する姿だけでも切なくなってくるのだが、窓を開けてからはじまる、忠男とその兄弟たちの会話は、さらに切なさが伝わってくる。
人は老いていけばいくほど、心が狭くなり、余計にガンコになり、自分のことしか考えなくなって人を受け入れたがらない。それは血が濃い兄弟や親類ならば、なおさら心が通い合わなくなるケースが多い。この作品は、そんな老いた人たち特有の心がもたらす「孤独感」を、長回しという緊張感のある演出から見せる。窓を開けるという演出には、人を受け入れる心を開く、という意味が込められているのだ。
しかも、この作品では若者の「孤独感」にも鋭い視線を投げかけている点が、実に興味深い点だ。
老人と同じく、若ければ若いほど視野は狭く、生意気と言われると他人への思いやりが粗雑になり、自己中心などと言われるようになる。この作品の孫娘・春にも、人への思いやりに欠ける、若者らしさが見える。その心の窓を開けようとしていくのも、この作品の大きな見どころだ。春が人に対して心を閉ざしがちなのは、彼女にまつわる悲劇も要因しているのだが、だからこそ、これから「孤独」と向き合う人生に不安を感じだす春には、とても共感する部分が多い。
この作品の試写会に来ていた人は、とても年齢層が高く、一般公開まで年長の人向けとして喧伝されるだろうが、私個人としては、若い人が見るべき作品だと思う。「孤独」と向き合うことを怖がる人が多い若い世代には、この作品から生き方の指針が見つけられるような気がするのだ。心を開くことの大切さを、若い人たちにこの作品から感じて欲しいと思う。
この作品は、演出の良さと役者の演技の素晴らしさが上手く融合しているのだが、中でも登場シーンはとても短いのだが、美保純の後ろ姿の演技には感銘を受けた。忠男の弟の妻を演じているのだが、わからず屋でガンコなところがある夫を理解している優しさがあるという性格を、後ろ姿だけで見せた演技は特筆すべきものだった。春を演じた徳永えりなど、珠玉の演技者たちを見るだけでもねこの作品は一見の価値があると思う。
厳しさの中に隠れた、互いの思いやりを垣間見るとき、最後は涙を押し切れないほど、ホロリとさせられます
もうこれは仲代達矢のワンマンショーといっていいくらい作品です。実年齢と近い仲代は、脚本にほれ込んだと言い、卓越した演技力で、頑固かつ偏屈な忠男を生々しく演じきりました。
この忠男に対する仲代の思い入れには、凄みを感じさせられることでしょう。
もうチョットでオーバーアクションになるギリギリまで、仲代は忠男の頑なさを出し切っています。春役の徳永えりとの息もぴったりで絶妙!
加えて小林監督の演出は、ゆったりとしたカット割りに、少なめな台詞が持ち味。セリフのない「表情」や「間」に魅せられます。じっくり芝居を見せる作品なんですね。恐らく年末の映画賞レースで各賞にノミネートされる傑作でしょう。
冒頭、北海道の荒海と寂れた漁村にパンしていきます。その荒涼とした光景は、寒風が肌に突き刺さってきそうなほど寒々しいものでした。
その漁村に佇む一軒家から、老漁師の忠男が家から飛び出し、その後を孫娘の春が慌てて追いかけます。
説明的なセリフはほとんどありません。
春と忠男が暮らす漁師町のカメラワーク一発で、作品の世界に引き込まれてしまいました。ふたりの抱えた事情は、次第に分かっていきます。春との旅は、決して桜が咲いて春の到来を告げる旅ではありませんでした。春の母が死んでしまい、老いた忠男とふたりだけの暮らし。それなのに春は仕事を失ってしまって、生活がピンチに。止むを得ず、忠男を預ける先を探す旅に出たのでした。
これはもう現代の姥捨物語といっていいお話しです。小林監督版「櫓山節考」といってもいいでしょう。もちろん春に祖父を捨てる意思はありません。けれども、いく先々の親族で拒絶されて意固地になっていく忠男の姿に、それを見る思いでした。
旅のなかで、生きることの厳しさを、ふたりはたっぷり味わいさせられます。そこには、老いの悲しみと肉親の感情の葛藤が綴られていました。でも本作が巧みなのは、その厳しさの中に隠れた、互いの思いやりを垣間見るとき。最後は涙を押し切れないほど、ホロリとさせられます。それが実にいいのですね。そして、忠男のどこか憎めなさに、親近感を感じました。
家を出たふたりは列車に乗り、何処かを目指すことになります。でも孫と祖父の関係にしては、何処かぎくしゃくしています。そして一軒の大きな家に到着して、やっとふたりの旅の目的がわかります。
どうも生活を維持していくための術を長兄の重男に頼ろうとしているようなのです。しかもアポなしで。
居候となろうというのに、忠男の不遜さは筋金入りです。兄の重男に向かって、絶対に頭を下げません。納屋でいいから居候になってやろうという物言いなのです。
ムッとなった重男は、忠男に家族の反対も聞かずに、ニシン漁にのめり込んだ過去のことを諫めます。忠男の苦境も元はといえば、それが原因で生活苦に追い込まれたのでした。いわば自分が捲いた種だったのです。
実際にも昭和28年に忠男が暮らしていた増毛の沖でニシンが姿を消してしまい、ニシン漁に頼っていた日本海沿岸の漁師たちは貧しくなっていくのです。それでも日本海の漁師は、いつかまた、ニシンが戻ってくると信じていたとか。忠男もそんな見果てぬ漁師のひとりだったのでした。
体よく重男に追い出される忠男であったが、別れ際重男はホロリと実情を語ります。実は息子夫婦が実権を持っていて、自分たちは近日中に老人ホームに入る身の上なのだと。申し訳なさそうに語る重男に、兄弟の絆を感じました。
重男が断ったように、自分勝手に生きてきた忠男は、親類との関係も疎遠でした。それでも、仕方なく次は、宮城・鳴子温泉で旅館を切り盛りする姉に当たってみるものの、春だけなら引き取るという、つれない返事でした。
さらに忠男に追い打ちをかけたのが、一番気の合った弟が服役中だったことです。もう後がなくなった忠男は、もう一人の弟道男を訪ねます。しかし、道男からバカと何度も大声で激しく罵倒され激高した忠男は、道男を押し倒して、取っ組み合いになってしまうのでした。
ここで注目したのは、体力では勝るのになぜか道男は、兄に殴られるまま抵抗せず泣いていたこと。それを見ていた道男の妻明子は、「仲がいいのね、羨ましい。」というのです。
その性格から、兄弟から疎ましく思われて、何十年も音信不通になっていても、やはり血の繋がった兄弟なんだという家族の絆の深さを感じさせてくれました。
重男の妻の菅井きん、服役中の弟の内縁の妻役の田中裕子を含め、芸達者なベテランをぜいたくに使った配役がぴたり決まっています。特に大滝と柄本は、短い出番ながら、なくてはならない存在感でした。それぞれ忠男と表面上ぶつかりながらも、それぞれに事情があり、内心は申し訳なく思っているのです。そんな心情を、仲代との絶妙な掛け合いで表現していました。
頑固な老人がどうしようもない現実にぶつかってもがく。そんなノリままだったなら、春のあり得ないような純朴さや余りに身勝手な忠男の言動に、共感できないまま、酷評することになったかもしれません。
ところが、忠男兄弟の絆を見せつけられた春が突然、幼い頃に自分を捨てた憎むべき実の父親に会ってみたいと言い出します。忠男と兄弟の仲も、春と別離した父親の関係も、冬の閉ざされたさなかにあったのでした。
北海道の牧場で暮らす父親の家に着いたとき、突然父親の後妻の伸子から挨拶された春は、父親の再婚を知ってショックを受けます。そして父親と再会したとき、母と離婚そしてその後の母の自殺の真相が明かされて、春が背負ってきた悲しみの深さに、グッ~と胸が締め付けられました。「人って自分のことしか考えられないの?」と健気にいう春がいじらしいのです。
そんな春を無言で、抱き寄せる父親の優しさにもホロリとさせられました。
忠男は親子の対面に気を利かせて、家の外で牧場を見ていました。そんな忠男に、伸子が言い寄ってきて、一緒に住まないかというのです。伸子は、父親不在で育ったため、忠男に父親代わりになって欲しいとせがむのでした。
さんざん身内の兄弟に断られたあげくに、他人の女から家に来ないかと言われるのは、何とも皮肉です。そんな暖かい申し出に、涙を浮かべつつ顔をそむけてしまった、仲代の表情に真の人生を見た思いです。
父との再会後、そば屋の場面が圧巻です。春の母とこの店を訪ねたことがあるという忠男が、母の思い出を語り出します。それを聞く春の目から自然と涙が止めもなく溢れます。泣きながらそばをすする春を、忠男が愛おしく抱き寄せるところが堪りません!名シーンです。
十分な間をとった長いワンシーン・ワンカットの中、ふたりの旅の何気ない場面が、ふいに見る側の心に浮かび、家族の絆の大切さに、言い知れぬ思いがこみあげてきます。
小林監督の作品の世界には、これまでどこか観客を突き放したところがありました。しかし本作は違っていました。最小限のセリフを大事に紡ぎ、俳優陣の名演と共に、親子、家族という、誰しもが抱える普遍的な問題を、観客にも考えさせてもらえるハートウォームな仕上がりです。家族、人生、死… 多くのことを考えさせてくれる、熟練の域に達した感動作だと思います。
切ない
我侭で、甘えん坊な年老いた駄々っ子の物語。
孫娘と二人でつつましく暮らしていた頑固な老人が、内心孫娘を自分の面倒をみるために女郎のように囲っていることをすまなく思い、
自分の面倒を見てもらえるように兄弟たちを訪ねて歩く。
長兄には悪態をつき、一番気の合う弟は刑務所の中。姉には叱咤され、羽振りが良いと思っていた弟には罵られ、自分が長兄に悪態をついたことも棚に上げ兄に向かって何事だと、まるで子供のように殴りかかる。
足が悪いから一人では暮らせない。薪割りでもするかと問われればそれもできないと言う。
断った兄弟たちに非はない。
当然の回答だろう。
孫娘に対するどんな思いがあったにしても
我侭な甘ったれの駄々っ子にしか見えない。
断った兄弟たちに共感しても、主役に同情や、感情移入はできなかった。
全編に流れる音楽は良かった。
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