「人生を見つめる旅路」春との旅 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
人生を見つめる旅路
拙ブログより抜粋で。
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望遠レンズで捉えられたいきなり家を飛び出すセリフのない冒頭に始まり、名優・仲代達矢と対等に渡り合うまだ若い徳永えり、最初に訪れた先の兄・重男を演じる大滝秀治と仲代達矢の長回し撮影の長ゼリフ、と、緊張感に満ちた画面にしょっぱなから引き込まれた。
ときに可笑しくもある市井の人々の生きる姿を優しい視点で拾いながらも、この心地いい緊張感は最後の一瞬まで途切れることがなかった。
映画の中での個々の出会いと別れには大仕掛けなドラマがあるわけじゃない。大変でも辛くても、それでも生きていくことへの真摯なまなざしが、やがて感情のうねりとなって大きな感動を呼ぶ。
訪れる先の家庭はいずれも何かしら問題を抱えている。それは老いの問題だったり、不景気だったり、不器用な生き方だったり。しかし皆、今を生きることに前向きだ。
身勝手に生きてきた忠男を軽くあしらいはしても、厳しさと同時に優しさも忘れない。
オルゴールの音色のような飾りっ気のない人間ドラマが心に響く。
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