「がに股」春との旅 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
がに股
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足が悪く、老いぼれている風体の老人忠男(仲代)。伸びた髭をばっさりとそり落とし、孫娘が止めようとするのを制止し、どこかへ向かって歩き続ける風景。一体何の目的で?と最初から惹きつけられる。
最初に訪れたのは長兄(大滝)が婿養子に出て住んでいた大きな家。元々そりが合わない二人だったのだが、忠男の方から「もういい」と諦めて出てしまう。帰り際にホームに入ることが決まってると打ち明けられるのが、なんとも物寂しい・・・
末弟のアパートに向かうものの、彼は刑務所の中。そして姉(淡島千景)のもとを訪ねると、働けない忠男は養えないが、小学校の給食の仕事をしていた春を跡取りとして迎えたいなどと言う。しかし、春は申し出を断る。最後の兄弟は道雄(柄本明)だったが、またもや喧嘩である・・・
当てもなくなった忠男だったが、春に実父に会わせてやろうと画策し、実父(香川照之)の実家へと向かう。そこでは忠男が実父真一の新しい妻(戸田菜穂)から「一緒に暮らしませんか」と言われ、思わず涙する。こ、これは『東京物語』のパターンか?!と、よく考えると、忠男にとっては全く血のつながりのない夫婦なのだ。牧場でのこのシーンだけでお腹いっぱい・・・でも、そのあと二人はこっそり抜け出し、一緒にそばをすするシーンがメイン。「おじいちゃんとはずっと一緒だからね」と、彼女は母を捨てた実父を許すことができなかったのだ。そして、一緒に北海道へと帰る電車の中で忠男は静かに息をひきとるエンディング・・・
血縁関係という薄い人間関係に、孤独と絆をうまく掛け合わせた良作だ。また、春を演ずる徳永えりのがに股がずっと気になるが、これは完全に演技なのです。
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