「一体なにをつかんだのか?」悪人 Maki69さんの映画レビュー(感想・評価)
一体なにをつかんだのか?
もったいない…
佳男が増尾の友人に語りかけるシーン
いれなくてよかったのに
映画に理屈を混ぜこむのは大きらいだ
.
.
そだててくれた祖父母に縛られる祐一
恋も満足もなにもない
だれかに甘えたいけど、
甘える相手もいない
自分に差し出せるものはない
お金しか
出て行った母親にも、
金をせびる
1000円でもいい、
なにか差し出せと
.
紳士服屋で、
終わりのない仕事を続ける光代
姉の奔放な愛をねたみつつ
それを抑えこむ
ねたみすら表現できないほどに、
力をなくしている
.
女をばかにすることで、
自分の力をあらわすことをおぼえた増尾
自分でわらいとばしてしまえば、
同情されなくてすむ
まだ、
わらえると、思っていた
.
男に必要とされることで、
自分がしあわせな気がする佳乃
必要とされていないと感じると媚び
必要とされると罵倒する
自分の存在価値を見つけだすのに、
かかりきり
.
美容院には興味のうすい妻が、
夫が大事にしている美容院の、
鏡を磨いて夫を待っている
夫は、
犯人への執着心を、
感情的な手段でさんざんはらしてきたというのに、
妻はそれを無垢なままに受けいれる
さんざん欲にまみれた顔をした人間を、
受けいれる
佳乃の、父と母
.
だれからも愛されていないとかいう、
妄想からはなれられなくなって、
すこし与えられた愛に、
飛びついてしまう
むしろ、
それは愛ですらないかもしれない
これしかない
これ以外つかめるものはない
執念
執着
さみしい
なんでもいい
溺れるものは藁をもつかむ
つかんだものは本当につかむべきものだったのか?
そんな選別すらなされないまま、
つかんでしまう
端からみれば、
一体なにをつかんでいるのかと笑ってしまえるようなものも
ばかなものをつかんでしまった、
なんて、
気づくのは10年後かもしれないし
もしかしたら、
気づく間もなく死ぬかもしれない
それなら、
つかめばいいのだと思う
.
なんだか大人気になりそうな映画だったけど、
なぜかいい映画かもと思えて、
見に行ってみた
私の勘はなかなかいいみたいだ
(後半1/4くらいはいらなかったけど)
映画も、
ことばと同じで、
いらない表現を、
切り落とす必要があると思う
.