劇場公開日 2010年9月11日

「一体なにをつかんだのか?」悪人 Maki69さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一体なにをつかんだのか?

2010年11月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

もったいない…

佳男が増尾の友人に語りかけるシーン

いれなくてよかったのに

映画に理屈を混ぜこむのは大きらいだ




そだててくれた祖父母に縛られる祐一

恋も満足もなにもない

だれかに甘えたいけど、
甘える相手もいない

自分に差し出せるものはない

お金しか

出て行った母親にも、
金をせびる

1000円でもいい、
なにか差し出せと



紳士服屋で、
終わりのない仕事を続ける光代

姉の奔放な愛をねたみつつ

それを抑えこむ

ねたみすら表現できないほどに、
力をなくしている



女をばかにすることで、
自分の力をあらわすことをおぼえた増尾

自分でわらいとばしてしまえば、
同情されなくてすむ

まだ、
わらえると、思っていた



男に必要とされることで、
自分がしあわせな気がする佳乃

必要とされていないと感じると媚び

必要とされると罵倒する

自分の存在価値を見つけだすのに、
かかりきり



美容院には興味のうすい妻が、
夫が大事にしている美容院の、
鏡を磨いて夫を待っている

夫は、
犯人への執着心を、
感情的な手段でさんざんはらしてきたというのに、
妻はそれを無垢なままに受けいれる

さんざん欲にまみれた顔をした人間を、
受けいれる

佳乃の、父と母



だれからも愛されていないとかいう、
妄想からはなれられなくなって、
すこし与えられた愛に、
飛びついてしまう

むしろ、
それは愛ですらないかもしれない

これしかない

これ以外つかめるものはない

執念

執着

さみしい

なんでもいい

溺れるものは藁をもつかむ

つかんだものは本当につかむべきものだったのか?

そんな選別すらなされないまま、
つかんでしまう

端からみれば、
一体なにをつかんでいるのかと笑ってしまえるようなものも

ばかなものをつかんでしまった、
なんて、
気づくのは10年後かもしれないし

もしかしたら、
気づく間もなく死ぬかもしれない

それなら、
つかめばいいのだと思う



なんだか大人気になりそうな映画だったけど、
なぜかいい映画かもと思えて、
見に行ってみた

私の勘はなかなかいいみたいだ

(後半1/4くらいはいらなかったけど)

映画も、
ことばと同じで、
いらない表現を、
切り落とす必要があると思う

Maki69