「哀しい復讐鬼」完全なる報復 FUMITさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しい復讐鬼
プロモーションでシカゴ・サンタイム紙の人が評している「緊張感に満ちたスリラー!」という言葉がピッタリ当てはまる作品。
予想もしないタイミングで起こる復讐の仕掛け。あるシーンでは思わず身体が「ビクッ」としてしまったよ。うん。
退屈させない佳作だったように思う。
2004年のアカデミー主演男優ジェイミー・フォックスが主演(ジェラルド・バトラーとのW主演)を務めるとは言え、プロモーション的にも地味で華やかさに欠ける作品だよね。
まぁ、大きく掲げられたテーマが「法と正義」だからね。どうしてもシリアスになってしまうのは仕方ないけどさ。
簡単に言ってしまえば【妻子を殺された主人公(バトラー)の復讐劇】。
ただ、彼が復讐を誓ったのは単純な実行犯だけではなく、その実行犯を厳正に・毅然と裁けなかった法曹・司法に対してもだったんだよね。
卑劣な犯罪を犯し、それを認めながら、確信犯的に司法取引をし、のうのうと生き延びる.....。被害者としては絶対に許せないことだよね。復讐を考えるのは理解できるし、共感さえ覚えるよ。
ただ、その審判に際してたまたま関わった人達にまで復讐の矛を向けるのはちょっと(;´Д`)
「大きな目的のためには多少の犠牲はやむを得ない」という思想が見え隠れする感じかな。
バトラー演じる犯人(テロリストと言ってもいいレベル)も決して「悪人」という視点では描かれていない。【悲しい過去に囚われて非情の道を歩む哀しい目をした復讐鬼】という感じかな。
対するジェイミー演じる検察官も「悪人」としてではなく、彼なりの信念を持って法を貫く男だ。
つまり「心情的な正義」と「社会的な正義」の対決の構図だね。
子の親である俺は、自然と(心情的に)犯人が目的を遂げることを応援していたような気がする。
もちろんそれが本当の意味での正義だとは思っていないけど、彼をここまで駆り立ててしまった怒りと悲しみを思うと、どうしてもね。
彼は、憎き実行犯に残忍で冷酷な復讐を果たし(これはちょっとやり過ぎ感が強かった)、そしてその後ろにある司法制度という大きな敵に対しても戦いを挑む。
あきらかに意図的に誇張した態度と手口を使ったのは、できるだけ【話を大きくする】ことで社会に対して与えるインパクトを大きくするためだったのだろう。
10年間という時間をかけて緻密に計算・準備された復讐劇。
驚きのラストも、おそらく全て彼の想定の範囲だったろう...。
きっと後悔は無いはず。
彼の目的は概ね達成されたはずだから。
冷静に観ればツッコミ所の多い作品ではあるけれど(笑)、テンポ良く進むストーリーは観ていて飽きることは無かったし、楽しめた作品だったよ。