メアリー&マックス : 映画評論・批評
2011年4月20日更新
2011年4月23日より新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほかにてロードショー
人を受け入れることの難しさと拒絶することのたやすさ
オーストラリアから新しい才能が出てきたと噂されていたアニメーション監督アダム・エリオットの長編デビュー作である。
だが彼に、ニック・パーク(「ウォレスとグルミット」)のようなかわいさや素直さを求めてはいけない。表現こそユーモラスだが、物語はかなりビター。というのもシュールさを追求するクレイアニメでは珍しく、エピソードの数々がとても現実的なのだ。それゆえファンタジーのような大胆な展開もなく、中盤ではありふれた展開に間延びも感じる。しかしリアルだからこそ20年にわたる物語において、人との関係は作るものではなく育むものだというテーマが切実に浮かび上がってくる。メアリーとマックスは、人を受け入れることの難しさと拒絶することのたやすさの間で揺れ続けるのだ。
コミュニケーションの難しさについて描いた映画は多いが、この作品の素晴らしさは、育むという点に重点を置いたことだろう。人は幸運が天から降ってくるのを待っているようなところがある。だが自閉症のマックスは人とコミュニケーションをとるというリスクを冒して初めて、幸せや楽しさもまた友情と同様に人と育んで得られるものだと知る。
誰もがわかっていながらなかなか認められないこの事実を、マックスの部屋の様子で見せたラストシーンは圧巻。感動というよりも、人の内側に溜まったものをデトックスしてくれるような映画である。
(木村満里子)