劇場公開日 2010年12月1日

「『日本のSF大作』としては十二分」SPACE BATTLESHIP ヤマト 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5『日本のSF大作』としては十二分

2010年12月8日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

オリジナルアニメの方は、話の設定や有名なキャラくらいは知っているが、まともに観た事は一度も無い。
再放送はあったけど、ああいう地球が滅亡寸前になる話って子供心に怖かったんですよ。現実でもTVのエセ科学番組で『地球が滅ぶ!』ってさんざん脅されるのに、アニメでまでそんなのやられたら逃げ場所を塞がれた心持ちにされるというか。
……ハイ、余談はここまで。

まず役者について。
キムタクの演技は初めの方こそいつも通り軽〜い感じだが、それが後半、“艦長代理”という地位の重圧に苦悩する段階との良いギャップとなって活きてくる。正直この方をカッコいいと思った事は今までいっぺんも無かったんだが、イスカンダル突入直前の演説シーンや最後の決断を下すシーンなんて実にカッコ良かった。
あとは沖田艦長役の山崎努。原作の沖田艦長って大男のイメージがあったんだが、山崎努は体格が小さくても抜群の存在感でカバー。心を動かす台詞って、感情的な演技を一切見せなくても言えるものなんですね。流石。

そして、最大の売りであるCGの迫力。
これは素晴らしい。序盤のヤマト発進シーンなんてゾクゾクしましたね! “アナライザ”も良かった。
恐らく制作費はハリウッド映画の半分以下だろうが、それでここまでやれたというのは見事と言えるのでは。まぁそんな余計な事考えなくても迫力十分です。
あとはガミラス星人の描写も今ひとつ不気味さが足りないが、不味くない。

但し、戦闘シーンで敵味方の位置関係などの状況が把握しづらい点や、CGの迫力に対して実写シーンの安さが不整合を起こしている点が痛い。特に後者。衣装や美術が新品みたいにピカピカなんですよね。もっと汚した方がCGの方に近付いたろうに。

CGは見事だが、ドラマ部分に冒険が無いのは残念。
それに、センチ過ぎる。日本の大作映画ってすぐにセンチメンタリズムに走って物語のテンポを崩壊させる印象がある。正直言って本作のクライマックスも例外では無い(早くしないと地球吹き飛んじまうぞ!とツッコんだのは僕だけじゃないハズ)。
けど、山崎貴監督の映画を観ると「まあそれはそれでいいか!」という気持ちになるのが不思議だ。この方の映画はどれも観終わってから優しい気持ちになれるんですよね。人を信じてる感じが滲み出てる。

以上。冒険心には欠けるが、『日本の大作SF』としての役目はきちんと果たした。観て損ナシの良作です。

<2010/12/4観賞>

浮遊きびなご