「世俗と純粋」すべては海になる odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
世俗と純粋
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山田あかねさんが原作、脚本、監督までこなすというのは相当の思い入れ、微妙で繊細な心理描写を他人にいじられたくなかったのだろう。
率直な感想はトルストイの言を借りれば幸せそうな家族は一様に見えるが不幸は様々な色をまとってみえるということだろう。現代人の漂流記のような物語、どういう訳か映画そのものより登場人物のキャラクター設定を考えた原作者の人生観や生理感覚の方に興味が惹かれた。主人公夏樹(佐藤江梨子)27歳独身の書店員だが乱れた思春期を引きずっているという、自身を直接描かず劇中劇の主人公小鳥(安藤サクラ)を通して表現するのは、私の友人の話という前置きが大体において当人の失敗談である女子特有の表現手法なのだろうか。あるいは原作者の私小説的な含みもあるかもしれない。光治(柳楽優弥)のキャラクターは夏樹の中のもう一人の自分の投影にも見える。こんな感想になるのは劇中の夏樹が漏らす本との向き合い方、味わい方に影響されたのかもしれませんね。
悩みは人それぞれなので感情移入が難しいし娯楽作品でもないので真面目に観ると疲れます、ただ世俗的な世界と率直で純真な光治の生き方のコントラストはお見事でした。
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