フィリップ、きみを愛してる! : 特集
2010年3月1日更新
“ウソのような本当の話”を巧みに描いた本作には、各方面から驚きと賞賛の声が多数寄せられている。今回はeiga.comの「映画評論」コーナーでも同じみの映画評論家、くれい響氏と佐藤久理子氏の寸評に加え、eiga.com独占試写会の会場でユーザーから寄せられたレビューも掲載。映画評論家と映画ファン、いずれをも魅了する本作の魅力が見えてくるはず。
映画評論家もファンも、すべてを魅了する「フィリップ、きみを愛してる!」
~映画評論家編~
パッと見、ちょっぴりオシャレで、キワドい変化球ラブストーリー。だが、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」同様、嘘のような実話を基にした痛快無比なコンゲーム(詐欺)映画でもある。とはいえ、「キャッチ・ミー~」の主人公がIQ136に対し、本作のスティーブンは169だけに、彼が繰り出すテクニックのスケールはハンパない。しかも、スティーブン役のジム・キャリーは、間違ってもシリアス路線でいくのではなく、いつものハイテンション&身体張りまくりで、ギャグをブッ放す。要はキャリーのコメディとしても、しっかり成立しているのである。さらに、今やアメリカン・コメディになくてはならない女優、レスリー・マンの飄々とした演技も見どころ。つまり、事実は小説より奇なりといえる荒唐無稽な脚本に、ブラックな笑いも決して容赦しない演出、そしてフルパワー全開のキャリーの魅力がプラスされた、笑いの三重構造。この面白さ、もちろん偽造じゃない!
文:くれい響
愛する相手のためにIQ169の天才的頭脳を使って詐欺を繰り返し、捕まっては脱獄を繰り返し、最後はついに懲役167年を言い渡された男の嘘のような本当の話。実在の人物だけに、演じるジム・キャリーの暴走も適度にリアルさを保っていて、フィジカルなパフォーマンスを含めたそのさじ加減が絶妙だ。かたや彼の愛情を一身に受ける内気なフィリップ・モリスに扮したユアン・マクレガーは、抑え気味の繊細な演技のなかにキャラクターの魅力を開花させている。この意外な顔合わせの楽しさ、パワフルな化学反応にとにかく魅せられる。ふたりは実際に一目惚れの相思相愛、でいながら、その関係を保つために嘘をつき続けざるを得なかった主人公の姿はどこかもの悲しく、愛の本質についても深く考えさせられる。
文:佐藤久理子
~eiga.comユーザー編~