「過去の自分との別れ」ソラニン シムウナさんの映画レビュー(感想・評価)
過去の自分との別れ
宮崎あおいが初めてバンドボーカルに挑戦という記事を
目にしてからどんな映画だろうと注目していました。
まぁ、あくまであおいちゃんファン目線だったのですが・・・
この映画で描かれるのは、20代前半。学生時代を卒業して
社会という縮図に子供から大人へと脱皮しなければいけない世代。
将来の不安、不透明な未来。
自分が何をしたいのか・・・何ができるのか
人生の転機を迎えるこの年代で、心に生じる迷いや葛藤を
感じた事がある人なら、きっと共感できると思います。
これから一歩を踏み出す20代の世代にはぴったりな映画。
この映画を見ながら10年前の自分を振り返ってしまった。
何がしたいのかと悩みながらも気がついたら
どうやったら社会に順応できるのかと目的もないまま
これまでの人生を過ごしてきたような気がしました。
そんな事も振りかえらせてくれる・・・
あまり20代って考えてみると何も残っていない
本編では、やりたい事もなく安定した生活を送るため
なんとなくOL2年目の芽衣子(宮崎あおい)と恋人の
フリーターで大学時代からのバンド仲間と楽しんでいる
種田(高良健吾)のなんとなく生きてる感じの若者2人。
もがき苦しんでいる姿があまりなく、一見、社会に
適応することをこばんでいる若者に見えたりするが、
この世代からすると、選択肢が目の前に数多くありながらも
どの道を選んでも将来永く続かないのではないか・・・
挫折してしまったら、この先どうする?
母親に会社を辞めてこれからどうするの?と諭されて
思わずこの先に何もないのに・・・反発してしまったり
自分の音楽を否定されるのが怖かったり・・・
種田が交通事故に合うシーンで、テロップで表示される
”本当に幸せ?”の文字に一瞬、凍りついてしまった。
学生時代、先の事は考えず仲間たちと盛り上がっていた。
その瞬間は幸せだったと思う。
将来の方向性の決断をして、この言葉が自分も
浮かんできたからである。
薬屋のカエルの置物をポストと間違えて、葉書を
送ろうとする老人のエピソードが印象的でした。
宛先と送り主の住所が同じ。
このエピソードにより、芽衣子が種田の残した「ソラニン」
を歌うくだりに上手く繋がっている気がした。
宮崎あおいが初ボーカル & ギター、
そして初スタジオと役者として臨んだ新境地にかける想いと
芽衣子が決して上手ではないが、技術ではなくハートを
伝える演奏がオーバーラップして、見事なライブシーンだった。
音楽は、その詩に込められた想いを感情を伝えることが
できればいいと思う。上手い、下手とか関係ない。
ギターで奏でられた音は、そんな想いを増幅させているようだった。
過去の自分にさようなら、そして新たな一歩を踏み出す。
この映画の主人公と同じく、将来に悩み苦しんだので
共感できたせいか、ライブシーンでは気がつくと泣いてた。
号泣ではなく、何故泣いたのか分からないほど。
この映画を20代前半で観たかった。
きっとこれから一歩踏み出す事のきっかけを与えてくれた
気がします。本当に残念で仕方ない