ガフールの伝説 : 映画評論・批評
2010年9月28日更新
2010年10月1日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
急激な速度で進化しつつある3Dアクション演出の現在がここにある
もう、笑っちゃうくらいザック・スナイダー映画。彼にとって初のアニメ、初の3D、初の非R指定なのだが、映像スタイルはいつものザック印。フクロウなのにアクションはキメキメの「300」仕様なのだ。
とはいえ、映像派のこの監督が、3Dアニメという新素材を得て新たな試みに挑戦しないはずがない。もっとも印象的なのは、光と色彩を掛け合わせた演出だ。2つの鮮烈なシーン、「海上の嵐」と「夜の火事」の主調色は原色で、ひとつは「青」、もうひとつは「赤」。それ以外の場面はすべて中間色になっている。そして、色彩の変化には「光」の強さが掛け合わされ、「青」のシーンは輝度の高い光、「赤」のシーンは暗い光。それ以外のシーンはフクロウたちが活動を始める黄昏の淡い光の様々なバリエーションで、その夕陽の角度の変化とともに世界の色も微妙に変化していく。この色と光の演出は、アニメだからこそ実現できたザック映画初の試みだろう。
もっとも強烈なのは「青」の場面だ。夜、嵐の海の上空で主人公が“飛ぶこと”を体得するとき、3Dの雨粒が現実にはあり得ない純度の高い光を反射しながら、観客の上に降り注いでくる。その至福。ああ、このシーンがもっと続いてくれたら、と願わずにはいられない。
また、3Dを意識したアクション演出は、群像戦闘シーンで1対1の対決を手前から画面奥まで重ねて配して手前から順に戦わせるなど、ただ飛び出るだけではない3Dアクションを志向するもの。「バイオハザードIV アフターライフ」と並び、急激な速度で進化しつつある3Dアクション演出の現在がここにある。
(平沢薫)