劇場公開日 2010年7月3日

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「全てのネタバレとなるエンドロールは想像を絶する破天荒さで、大爆笑!他の追随を許さぬ面白さ」ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0全てのネタバレとなるエンドロールは想像を絶する破天荒さで、大爆笑!他の追随を許さぬ面白さ

2010年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 2日後に挙式を控えたダグが悪友4人を集めて、ベガスで開いた独身パーティー。だが一夜経って、メンバーが目醒めてみると肝心の花婿が忽然と消えてしまったというドタバタコメディ。

 ストーリーティーリングが巧みで、最後の最後まで、安易なフラッシュ・パックを使わず封印。何しろ残ったメンバーは酷い二日酔いで狂乱の夜記憶がないという状況を貫いています、おかげで見ている方は、最後まで一体どんな一夜を過ごしたのだろう?そして花婿はどこへ消えたのだろうと、まるでミステリーを見ているかのような謎解きに惹き付けられました。
 そのカタルシスは、なんとエンドロールで一気にネタバレします。画面に映る彼ら自身がデジカメで撮影した一夜の痴態は、想像を絶する破天荒さで、大爆笑。ジャッキー作品を超えるエンドロールの爆笑度でした。

 とにかく4人が平穏に乾杯した後、一気に翌朝の記憶が飛んだシーンへの飛躍が半端でないのです。最後の独身を満喫するため借り切ったゴージャスな高級ホテルの一室は、嵐の後のように荒れ果てていただけではありませんでした。
 何故だかニワトリが駆けづり周り、何とトイレには本物のトラいて、さらに見ず知らずの赤ちゃんがそこで叫び声をあげる始末。
 本作が巧みなところは、これらがすべて失踪した花婿捜しの伏線として繋がっていることです。しかも、一つの謎を辿っていくと、新たな事実が判明して謎が深まってしまう展開なんです。
 例えば、本人役で突如マイク・タイソンがカメオ出演します。何で彼が?と思ったら、「ペットのトラを返せ」というのです。
記憶をなくした悪友たちと共に観客も、どこでタイソンと接点ができたのか。タイソンの自宅からどうやってトラを連れてきたのか、興味津々です。
 命がけでトラを戻しにタイソン邸へ行ったら、監視カメラの映像に昨晩のことが記録されていて、悪友たちはダグの手がかりを得て、次の展開へというふうに、すべてのシークエンスが巧みに繋がっています。

 ラストは時間が押したのか、やや強引な展開となるのですが、それまでのエピソードがてんこ盛りで、飽きさせません。とにかく予想外の出来事が次から次に起こって、悪友たちの花婿捜しは、混迷を極めるのです。
 さらにストーリーの主役は、花婿ばかりではありませんでした。誘われた悪友たちも個々にマンネリな女性関係を抱えて、この旅を通じて、新しい人生を手に入れるのです。登場人物にとっての“失われた時″の回復は、単に過ぎ去った過去の時間の記憶を取り戻すだけではありませんでした。トラや赤ん坊といった過去の痕跡を辿るなかで、様々に体験するハプニングを通じて、新たに人生を生き直すきっかけを掴むのでした。
 単なるドタバタでなく、人間ドラマの要素も埋め込んでいるところに共感しました。

 ただ日本人は、本作のようなカジノに昂じる文化をもっていないので、彼らの高揚感が掴みにくいかもしれません。それでもいろんなアメリカ映画がベガスをどのように描写しているかをつぶさに見ていけば、ベガスは多くの人々にとって一生に一度は詣でるべき“聖地″となっているようです。
 だからベガスは独身最後の一夜のハメを外すのに、うってつけであり、劇中同様にバツの悪い方にはワイン産地のリゾート地ナババレーへ行ってくるという口実で立ち寄れる便利な場所なんですね。

流山の小地蔵