ローン・レンジャー : 映画評論・批評
2013年7月23日更新
2013年8月2日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
ユーモラスな味わいとサービス精神たっぷりの大活劇
アメリカでは批評家受けが悪く、ディズニーの大作としては興行成績も残念なのだという。なぜだ? 不思議でしかたがない。
確かに、ディズニー映画にしてはダークでバイオレントな面がある。人が死にまくり、血しぶきこそ見えないが血なまぐさい。ジョニー・デップ扮するトントがジャック・スパロウの西部劇バージョンに見えるかもしれないし、展開も「パイレーツ・オブ・カリビアン」に似たところはある。上映時間は2時間半の長尺。しかし、だからどうした? ブラッカイマー&バービンスキーに何を期待する? それもこれも、観客がめいっぱい楽しめる西部劇を作ろうというサービス精神の表れじゃないか!
描かれるのは往年の人気シリーズの「はじまり」の物語。カタブツで二枚目の正義漢ジョンが先住民のトントと出会い、仮面のヒーロー「ローン・レンジャー」になるまでの旅路であると同時に、少年時代のトラウマを復讐により克服しようとするトントの奮闘記であり、ちぐはぐなコンビのバディ・ムービー。語り手はトントだ。残忍な悪党も先住民の無念も描かれているが、アヤシくてスピリチュアルで飄々としたトントのユーモラスな味わいが映画全体を支配しているため、楽しさが途切れない。ジョニーが「パイレーツ~」で感じさせてくれたのと同じ効果だ。ジョンの白い愛馬シルバーも魅せてくれる。
そして冒頭とクライマックス、列車を使った究極のアクションは、まさにスリルと興奮のウエスタン大活劇! 旧シリーズを知らなくても「ウィリアム・テル序曲」をバックに「ハイヨー、シルバー!」を聞けば、カタルシスが得られること請け合いだ。
(若林ゆり)