劇場公開日 2011年3月12日

「子供視点と大人視点で大きく見方が変わる作品」塔の上のラプンツェル 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 子供視点と大人視点で大きく見方が変わる作品

2025年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

子供と一緒に視聴したのだが、多分子供目線だとラプンツェルを利用する悪い母親程度なのだろう。だが、大人視点から見ると魔女ゴーテルはまさに毒親。ラプンツェルに事あるごとに毒を吐き、自分の都合のいいように思考を誘導し、外は怖いからと塔という籠の中に閉じ込める。誘拐した偽の母親であるというのが、救いでもあるというのが恐ろしいところ。世の中にはこんな毒親が実母という救い難い家庭も多数あるのだ。

そんなラプンツェルだが、外の世界に夢を抱き、たまたま塔に迷い込んだユージーンをガイドに旅立つ。旅立った直後は自己嫌悪に陥ったり、ハイになってしまったりと、不安定なまさに躁うつ状態を繰り返す。自分の親に違和感を抱きつつも、私のことを想ってやってくれていると思い込む傾向があるという、こんなところもリアルな毒親育ち感があって微妙に怖く感じた。

魔女ゴーテルなりにラプンツェルを大事にしているのは名前や誕生日を教えたり、プレゼントを贈ったりすることから伝わって来る。しかし、それは所詮ラプンツェルが若返りの道具として便利だからだ。塔を昇り降りする時も、わざわざ長い階段を昇らずとも、彼女の長い髪の毛でエレベーターのように昇降出来るからだ。本来の親のような無償の愛ではない。

その本来得るべき無償の愛を国王夫妻から受けられなかったラプンツェルが可哀想に思えた。親から無償の愛を受けているからこそ、自分も我が子に同じように無償の愛を向けられると思う。実際自分はそうしているつもりだし、それが出来ないといわゆる負の連鎖というものが出来るのだろう。中にはもちろん親を反面教師にする人もいるのだろうが、多くは愛着形成障害があり、人と関係を築くのが難しいらしい。

ハッピーエンドで終わるものの、火垂るの墓のように、子供視点と大人視点で大きく見方が変わる作品だった。是非とも我が子が大きくなった時に一緒に観て、魔女ゴーテルについての感想を聞いてみたいものである。

森林熊