「とても良くできた玩具のような作品」インセプション あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良くできた玩具のような作品
2010年アメリカ映画。2010年45本目の作品。前作「ダークナイト」で一気にメジャー級に躍り出てきたクリストファー・ノーラン監督の待望の最新作。昨年の8月に映画館で観ました。
内容は;
1、主人公の男の生業は、他人が夢を見ている間に深層心理に入り込み、その中の情報や記憶を盗んだりねつ造すること。
2、男はとある大企業幹部に敵対するライバル企業CEOの頭に入って、情報工作してほしいと依頼される。
3、依頼を引き受けるが、そこには想定外の難関が立ちはだかっていた。
イギリス出身のノーラン監督の過去の作品は恐らくすべて観てきたから思うのですが、この人はイギリス哲学にかなり造詣があると思います。意識、無意識と現存世界のつながりを題材にしている所が、いかにも的な臭いがするわけです。
本作では、意識の階層的な世界に主人公たちが入り込み、暴れまくるような作品で、心理世界の謎や神秘といった普遍的題材は一切無視。まるでテレビゲームの世界のような構造で固められた世界の中が描かれています。
これは、あくまでエンターティメントな作品。そう割り切れれば、それなりに面白いのかもしれません。そして、これはつまり言い換えれば、この作品に流れる題材は何一つ親身になれるものがないということ。
そして、本作を哲学的または心理学的に観るとあまりにも安易かつ安っぽい。そこまでゲーム感覚で描いていいのかと首をかしげたくなるくらいにゲームの世界。特撮の罠にはまった作品とわたしには写りました。
この手の題材だったら、ミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」やスタンリー・キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」がお勧めですよ。