「物凄くおバカな物語を、物凄く難しく説明している映画。…もしくは凄く哲学的な映画、なのか…?」インセプション たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
物凄くおバカな物語を、物凄く難しく説明している映画。…もしくは凄く哲学的な映画、なのか…?
他人の夢に入り込み、その人のアイデアを盗み取るスパイがインポッシブルなミッションに挑戦するSFケイパームービー。
監督は『メメント』「ダークナイト・トリロジー」のクリストファー・ノーラン。
主人公コブを演じるのは『タイタニック』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の、後のオスカー俳優レオナルド・ディカプリオ。
コブのクライアントであるサイトー役に『バットマン・ビギンズ』以来、ノーラン監督と2度目のタッグとなる渡辺謙。
コブのサイドキックであるアーサー役には『G.I.ジョー』『(500)日のサマー』のジョセフ・ゴードン=レヴィット。
コブの妻モルを演じたのは『TAXi』シリーズや『ビッグ・フィッシュ』のオスカー女優マリオン・コティヤール。
「設計士」アリアドネ役に『X-MEN』シリーズや『JUNO』のエレン・ペイジ。
「偽造士」イームス役に『ブラックホーク・ダウン』『マリー・アントワネット』のトム・ハーディ。
ターゲットであるロバート役には「ダークナイト・トリロジー」でもノーラン監督とタッグを組んでいるキリアン・マーフィがキャスティングされている。
「ダークナイト・トリロジー」『プレステージ』など、ノーラン作品には欠かせない伝説的名優サー・マイケル・ケインも当然出演している。
第83回アカデミー賞に於いて、撮影賞、録音賞、視覚効果賞、音響編集賞の4冠を達成‼️❗️
第36回ロサンゼルス映画批評家協会賞に於いて、美術賞を受賞している。
クリストファー・ノーランらしい物凄くシリアスで緊張感のある映画。
難しい用語と難しい設定が飛び交うので、一見するととても高尚な作品に見えるが、何をやっているかといえば、夢の中に入り込むことのできる犯罪チームが、クライアントのライバル企業を潰すために右往左往するというケイパームービーの王道。
そこに主人公コブが過去の罪と向き合い、それを受け入れるという展開が差し込まれることで物語に奥行きとスリルが生まれている。
この映画がわかりづらくなっている理由として、大きく4点が挙げられる。
①盗みの対象人物の夢に入り込むのではなく、仲間の夢に対象人物を誘い込むという点。
② 「夢の中の夢」と表現されている様に、夢が多重構造になっている点。
③強制的に夢から退場させる「キック」という行為のルールが曖昧な点。
④夢に深く入り込むと「虚無」という空間に行き着き、そこからは自力での脱出は不可能であるという点。
この内、①と②に関しては設定の面白さとして受け入れられるが、③と④に関しては明らかに説明不足。
この2点について「ん、どういうこと?」となっている間に物語が進行するので、いまいち話にのめり込めなかった。
設定の面白さは非常に良いが、夢というなんでもありな空間の割には、そこで起こることが常識の範囲内であることは残念。
街中で急に列車が来たり、無重力のホテルで格闘したりするのは面白いが、それ以外は出来の悪い007の様で設定を活かし切れていない。
あと、危険なミッションなのは判っているのに素人であるサイトーやアリアドネを連れて行くのはおかしいだろー。やっぱりサイトーが足引っ張るし…
そもそも、これまで夢について全くの門外漢であるアリアドネを最高難易度のミッションの「設計士」として起用するのもどうなの?そんなに人材不足なのだろうか?
あと、リーダーのコブ。凄腕らしいがそんな描写がなく、大体のピンチはこいつのせい。
流石に仲間にモルのことを説明しとこうよ。プロとしてさー。
「調査不足」でピンチに陥るというのもアホらしい。第一、大企業の跡取りなら夢犯罪に対するトレーニングを受けていると考える方が自然でないですかねぇ。
無駄にシリアスに作りすぎているので、普通のケイパームービーなら笑い所になるポイントにツッコミたくなる。
ノーランの持ち味ではあるが、もっと気楽な作品として作っていれば普通に楽しい映画になっていたのだろう。
例えばマシュー・ヴォーンやジェームズ・ガンが監督していれば、バカバカしい痛快活劇に仕上がっていたんじゃないだろうか(それで名作になるとは限らないが…)。
クライマックスのコマが止まるかどうか…!という所でのエンディングは好きです。
夢か現実かわからないというエンディングは、もっと拡大して考えればそもそもこの映画の出来事はすべて夢であるという風に捉えることもできる。
コブという人間すら本来は存在しておらず、すべては他者の夢の中の出来事である…とは考えすぎか。
「そもそもこれは映画なんだから、現実な訳ないじゃん」というメタフィクション的な捉え方も出来るし、夢を扱う作品としてはベストなエンディングだと思います❗️