「派手な超能力バトルシーンが嘘くさく見えてしまいました。」PUSH 光と闇の能力者 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
派手な超能力バトルシーンが嘘くさく見えてしまいました。
超能力の軍事利用のために育成された能力者が、片方は政府の陰謀を阻止する側と推進する側別れて、超能力を競い合うバトルに加えて、双方が追いかける女が持っている600万ドルのケースを狙う地元の暗黒組織が絡んだ銃撃シーンなど、複雑な3すくみ状態のなかで、ストーリーが進行します。
『HEROES/ヒーローズ』の善悪が入り交じるストーリーを楽しんでいるものからすると、本作は善悪の色分けが単純すぎてつまらなかったです。超能力のバトルシーンは、派手なんですが、派手すぎると嘘っぽく見えます。
比べてみると『HEROES/ヒーローズ』のリアルティがよく分かりますね。
ところで超能力の軍事利用というのは、映画の世界だけではなく、現実にアメリカが超能力者を訓練している実話から本作が作られたそうだから、空恐ろしいことです。
超能力の派手な戦いより面白いのは、タイトルの『PUSH』という能力。プッシュされると記憶を消されたり、書き換えられたりするのです。キラはその能力のエキスパートでした。
他に「ウォッチャー」という能力を持つものがいて、各人の思っていることをレーダーみたいにキャッチして、居所を突き止めたり出来る人がいるので、自らすすんで記憶を消したりすることもあります。
ニックの場合は、“ディビジョン”から逃れるために記憶を消したとき、重要事項を記したメモを仲間と自分宛に渡していました。
『PUSH』という能力があるため、自分が信じている記憶が作られたものか事実か疑心暗鬼になってしまうのです。ニックとキラの関係も、恋人同士のように見えたのに、“ディビジョン”に捕まって以来、あれは作られた記憶といい初めて、ニックを悩まします。
そんなキラも、確保される前にニックから、迷ったとき読めと渡されたメモを見たとき、本当の記憶が蘇ったようでした。
記憶が変えられてしまう能力があることが、本作を面白くしている点であり、ストーリーをややこしくしているポイントと言えます。
後半の重要キーマンとなるキャシーの母親探しは、次作に持ち越し。続編が作られないと中途半端な作品に終わってしまうそうです。
ストーリーはイマイチながら、キャシーを演じたダコタ・ファニングが主要メンバーで登場しているのが救いです。彼女の感情を爆発させるところや小悪魔みたいに意味深に笑いを含めるところなど、ティーンエイジャーにして大女優の風格を本作でも魅せていました。
ところで撮影は、隠しカメラなど多用し、ゲリラ撮影を敢行したわりには、あまり臨場感は感じさせてくれませんでしたね。