「単純な「主人公と悪者」じゃない。」コララインとボタンの魔女 3D 銀平さんの映画レビュー(感想・評価)
単純な「主人公と悪者」じゃない。
普通のDVDで一回目の鑑賞後の感想。
「これ、映画館で3Dで見ればよかった!」
激しく後悔しました。
私の中では「コープス・ブライド」を超えました。
主人公コララインをはじめとする登場キャラクターの可愛さ、奇妙さ、儚さ、恐ろしさ。
背景の細部まで丁寧に作られたファンタジックな映像、多彩な色づかい、あふれるユーモア。
全てがアニメ特有の美しさを発揮しており、私の好きなツボを完全に押さえています。
この映画は単なる「かわいいアニメ」ではなく、「“世にも奇妙な物語風”不気味アニメ」です。
まず、オープニング。人形がハサミで切られ、糸を抜かれ、綿を出される。装飾を全て剥がされた人形はとても不気味で恐ろしく見えます。
結構リアルな映像なので、余計に怖く感じます。
「別のママ・パパ」は「ほんとのママ・パパ」より身なりがきれいで、優しくて、理想の家族を感じさせながらも、目がボタンなので、「理想だけど、どこか危険なにおい」が常に付きまとっています。
そして「ボタンの魔女」が本性を現した時、「理想の世界」の本当の姿が見えてくる…。
この映画、何度か繰り返し見ていると、「魔女は本当に単なる悪役なのか」という疑問が湧いてきました。
魔女はあの手この手で、最後のほうは力づくでコララインを手に入れようとしますが、果たして魔女は自分の命を保つためにコララインの命を狙っていたのか(単純に「子供の命」が必要だったのか)、それとも他に理由があったのか。
「置いて行かないで!」という魔女の叫び。
コララインの命を食べるという目的なら、この言葉は出てこないと思います。
もしかしたら、魔女は「子供」が欲しかったのではないでしょうか。
魔女自身が「(別の)ママ」となり、「(別の)パパ」がいて、そしてコララインという「娘」がいる。立派な家と、素晴らしい庭もある。
おいしい料理を囲んで、ゲームをして、一家団欒の毎日を過ごす…。
擬似的であっても、そんな「幸せな家族」が魔女の望みだったような気がします。
でも、魔女の世界の一員になるためには目をボタンにしなければならなかったせいで、コララインはそれを拒否した。
もし、目がボタンじゃなければ、結果は違ったかもしれない。
コララインの気を引くために魔女が与えた「贈り物」は、魔女なりにコララインを愛していたから。
姿は恐ろしい魔女ですが、魔女自身も苦しんでいたんじゃないか…、と思います。あくまで、私の解釈ですが。
コララインが、バスルームにウジャウジャいるゲジゲジを素手で潰すところがありましたけど、たぶん彼女は庭いじりが好きなので、虫は平気なんだろうと思います(私にはとっても無理です)。
とにかく見てよかったです。そして迷わず殿堂入りしました。